アンコンシャス・バイアスとは?意識して気づき職場に多様化をもたらそう

偏見

アンコンシャス・バイアス|意味や影響、職場で見られる事例を紹介

ダイバーシティの推進や将来的な人材不足、競争力強化などの観点から、多様性のある人材の登用が各企業で進んでいます。性別や国籍、職歴などの違いをもつ人材が集まり互いを認め個性を積極的に生かすことで、イノベーションを生み出しやすくなります。

そこで注目されているのが、「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれる思考や行動です。相手の部分的な要素や属性から「こうに違いない」と無意識に思い込むことを指し、過度になると人間関係のトラブルや、パフォーマンス低下に結びつく可能性があります。組織への影響や対処法について理解を深め、マネジメントに生かすことが大切です。

アンコンシャス・バイアスとは?

アンコンシャス・バイアスの意味や、ビジネスシーンにおける影響について説明します。

「無意識の偏見」とも呼ばれる根拠のない思いこみ

アンコンシャス・バイアスは、無意識を意味する「unconscious」と、偏見を意味する「bias」が組み合わさった言葉で、無意識の思い込みや偏見を指します。人生で蓄積されていく過去の経験や周囲の意見、知識や価値観などが土台となり、気づかないうちに先入観や固定概念が形成され発言や行動となって表れます。

ただし、アンコンシャス・バイアスの思考は、完全に排除すべきものではありません。物事に対する判断を高速化させ、素早く行動に移すための重要な思考とも言えます。大切なのは、一人ひとりが自分自身のアンコンシャス・バイアスを自覚し、周囲に悪影響を与えないように対処することです。

ビジネスシーンで注目される理由

近年、企業経営にダイバーシティの考え方が取り入れられ、年齢や性別、職歴や国籍などの多様性を認めた人材採用や活用が積極化しています。またSDGsの目標にも、障がいやジェンダー格差を無くし、平等な機会を設けることが掲げられているように、企業の差別撤廃を求める熱は年々高まっています。

そもそもアンコンシャス・バイアスがビジネスで問題視されるようになったのは、Google社やFacebook社などアメリカの大手IT企業における、人種や性別の不平等が表面化したことがきっかけでした。日本企業においても、正しい知識を得ずにグローバル化や人材の多様化が進むと、従業員のモチベーションや人間関係への影響、企業成長の鈍化などの影響が予想されます。

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アンコンシャス・バイアスは誰でも持っているもの

アンコンシャス・バイアスは人生の中で自然に培われるものであるため、自分を客観視し、うまくコントロールすることが大切です。口から出た言葉や無意識に取った行動が人を傷つけたり、キャリアを狭めてしまうかもしれません。一人ひとりが自分の中に潜むアンコンシャス・バイアスと向き合う必要があります。

職場でよくあるアンコンシャス・バイアスの具体例

アンコンシャス・バイアスの種類と特徴、職場で起こり得る例について説明します。

ステレオタイプバイアス

アンコンシャス・バイアスの典型例が、ステレオタイプバイアスです。自身の経験や文化的背景に基づき、性別や肌の色、職業に対し抱く先入観や概念で相手を判断します。「女性は男性よりもサポート業務に向いている」「外国人は主張が強い」といった考え方が該当します。

正常性バイアス

正常化バイアスがかかると、危機的な状況や不測の事態に直面しても何事もない正常な状態と誤認してしまいます。都合の悪い事象やデータから目を伏せ、「自分は関係ない」「偶然起きたものだ」と楽観的になるため平常心は保てますが、対応が遅れる傾向があります。そのためトラブル発生時や緊急性の高いタスクに対し、臨機応変な判断がしづらくなります。

確証バイアス

自身の価値観や信念にそぐわない情報を排除し、自身の正しさを確証できる情報のみ収集するのが確証バイアスです。均一に情報を扱わず不都合な情報は認めないため、公平な判断がしづらくなります。例えば「子どもをもつ女性社員は仕事より家庭優先」と考えていた場合、同調する意見のみ集めようとして、偏った結論にたどりつきます。新サービスや新製品を企画する場面では、ターゲット設定を誤り、売り上げにつながりづらくなるかもしれません。

権威バイアス

権威バイアスは、上司や経営者など社会的地位が高い人の意見は正しいと思い込み、逆に社会的地位が低い人の意見は尊重しない考え方です。目上の人が常に正解であるという思考から、役職や地位の高い人にのみ賛同するため、自身で考える力が弱くなります。有益な意見やチャンスに目を向けられず可能性が広がらないため、イノベーションを生み出しにくくなるでしょう。

集団同調性バイアス

周囲と同じことを同じように実行すれば間違いないと考え、同調しようとするのが集団同調性バイアスです。たとえ自身の意見が周りと異なっていても表に出さずに他人に合わせるため、素直な性格にも映りますが、個性を発揮しづらくなります。海外に比べ集団生活を重んじる日本人に多い特性です。組織の中でも少数派の意見は埋もれ多数派の意見がまかり通るため、活発な議論が遠のきます。

ハロー効果

ハロー効果は、相手の一部分に対し好意を感じると、発言や行動すべてを好意的に捉えてしまう効果です。例えば、自身と共通の趣味を持つ人がいればその人の意見を優遇したり、同郷出身の人には疑いを持たなかったり、学歴が高い人は何においても優秀だと決めつけたりと、誤解してしまうケースが予想されます。

アンコンシャス・バイアスが組織に与える影響

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アンコンシャス・バイアスは組織にさまざまな悪影響を及ぼします。以下で主要な悪影響を解説していきます。

採用や評価、育成において公平でない判断をしてしまう

組織をコントロールするリーダーや経営層が、アンコンシャス・バイアスにより誤った判断をすると深刻な問題を招きます。例えば、採用や評価において性別や人種から抱くイメージで相手を評価すると、その人自身を正しく評価できないので優秀人材を逃しやすくなります。また偏った考えを基に指導すると、成長の機会を充分に与えられずモチベーション低下や離職を招く可能性があります。さらに、アンコンシャス・バイアスが効いたマネジメントでは似たような人材ばかりの母集団が形成されるため競争力が弱体化してしまうでしょう。

ビジネスチャンスを損失してしまう

人材タイプの偏りは、事業に新たな価値を生み出しにくいので、事業拡大やグローバルを視野に入れた戦略にも踏み出しづらくなるでしょう。社外のパートナーに対しても、「20代の経営者は信用できない」「伝統ある会社はつぶれる心配がない」といった排他的な考え方や思い込みは、ビジネスチャンスの弊害になります。思考に蓋をせず視野を広げ、正当に評価することが重要です。

職場の人間関係が悪化する

アンコンシャス・バイアスによる偏見は、個人間のコミュニケーションにも悪影響を及ぼします。同僚同士や上司から部下へ配慮のない態度が露出すると、チームワークが乱れ組織のパフォーマンスは低下します。例えば、「子どもが風邪を引いたのなら、奥さんが休めばいい」といった発言は、受け取り側のモチベーションを下げ、信頼を失います。

アンコンシャス・バイアスに対処するには「気づき」が大切

アンコンシャス・バイアスとうまく付き合うには、自身で偏った捉え方をする可能性があると認知し、相手に不快な思いをさせていないか日頃から注意することが大切です。

相手の表情や態度の変化に注目する

偏見が表に出ると、相手の表情や反応に変化があります。会話の途中で突然顔色が曇ったり声のトーンが暗くなったりした場合は、アンコンシャス・バイアスが要因かもしれないため見落とさないように注意しましょう。そして、気づいた時点で相手に謝り誠意を伝えることで信頼関係を維持しやすくなるでしょう。同じ過ちを繰り返さないように、どのような発言によって不快にさせたのか自身の偏見を分析し傾向を把握することが大切です。

自己認知を習慣化させる

一人ひとりが自身を客観的に見つめ、結論を出す前に、他に選択肢は無いか考えることを習慣化すると効果的です。正確な判断ができるようになり、コミュニケーションが活発化したり業務の生産性が上がったりと良い影響を及ぼすでしょう。個人に委ねるだけでなく、経営層や人事部、管理職などが主導となって、研修やマネジメントに組み込み企業全体に浸透させることも必要です。

アンコンシャス・バイアスの改善に取り組んだ企業事例

アンコンシャス・バイアスが企業の育成において重視されるようになったのは、2018年にスターバックスで起きた事件と、それに対する社員育成がきっかけです。

スターバックスは全米で8,000店舗を持つコーヒーのチェーン店ですが、フィラデルフィアの店舗で人種差別事件が起きました。待ち合わせ中の黒人が、注文をせず店内のトイレを借りようとしたところ、店員は去るように言い、それを黒人客が断ると警察に通報したというものです。国民的なコーヒー店であるスターバックスで黒人差別があったことは、全米で波紋を呼びました。

事件後、スターバックスは人種差別撲滅のため全店舗を臨時休業しすべての従業員にアンコンシャス・バイアスのトレーニングを実行しました。

スターバックスの事件は、当事者であるスタッフの無意識な偏見による行動が発端となっており、アンコンシャス・バイアスは誰にでも潜むもの、かつ人材育成により改善すべきものと認知が広がった出来事です。

まとめ

従来型の画一的な人事や採用から、個を生かし新たな付加価値を生み出す戦略人事へと移行する中、その道を閉ざすような行為はいち早く対処すべきでしょう。アンコンシャス・バイアスの存在を受け入れ、フィルターをかけずに相手を捉えることで、豊富な考え方や思考に触れられるようになります。従業員に対し定期的なトレーニングを実施して理解を促進するだけでなく、企業側が職場アンケートなど従業員の声を拾う手段を充実化させ配置検討や組織デザインに取り込むことも有効です。個人と企業、双方から対処すると課題の早期解決につながりやすいでしょう。

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