ストレスに強く、エンゲージメントも高い人材育成のヒントとして「メンタルタフネス」という概念が注目されはじめています。
本記事では、メンタルタフネスを鍛えるメリットとメンタルタフネスの鍛え方、習慣化の方法について解説しています。
また、最後にメンタルタフネスのチェック項目も紹介していますので、あわせてご活用ください。
メンタルタフネスとは
メンタルタフネスとは、ストレス耐性という意味で用いられる言葉です。「解決に向けた行動が起こせるかどうか」という意味も含んでいます。
ビジネスシーンにおいて、ストレスやプレッシャー下でも高いパフォーマンスを発揮できる人材こそが、メンタルタフネスに優れた人材といえます。
環境の変化が目まぐるしく、ストレスやプレッシャーがかかる状況でも、良いパフォーマンスを発揮しなければならなりません。そんな現代社会において、メンタルタフネスは必要なテクニックとされ、概念に注目が集まっています。
また、メンタルタフネスは、生まれつきの性格で決まるわけではありません。トレーニング次第で誰でも身につけられる「スキル・能力」です。ストレスへの向き合い方を学べば、スムーズな対処ができます。
メンタルタフネスを鍛えるメリット
企業にとって、従業員一人ひとりがストレスとうまく向き合えるようになれれば、メンタルヘルス不調者が出にくくなるため、離職対策につながります。また、自発的に業務に取り組む従業員が増えるため、生産性の高い組織をつくれることにもつながります。
従業員個人としても、自らストレスに対処できるようになり、エンゲージメントの維持・向上にもつながります。
メンタルタフネスは、リスクマネジメントとして従業員と企業の双方にとって重要だといえるでしょう。
メンタルタフネスの鍛え方
メンタルタフネスはどのように鍛えればよいのでしょうか。いくつかの方法を紹介します。
ポジティブな表現を使い自己肯定をする
否定的な言葉は使わず、肯定的な表現を使って前向きな状況を作り出します。
例えば、
「しか~できなかった」→「自分には伸びしろがある」
「自分に自信がなく、なかなか決められない」→「慎重にものごとを進められる」
「あの人に比べて自分はダメだ」→「あの人はあの人。自分にしかないいいところもある」
などといったような表現を用います。
しかし、慣れないうちは言い換えること自体が難しいと感じる人もいるのではないでしょうか。
まずは「でも」「だって」「どうせ」などといった否定的な口癖を減らすことから意識してみてください。
そして代わりに「だからこそ」「むしろ」など、自然とポジティブな表現が続く接続詞を使って自分自身を肯定してみるとよいでしょう。
言葉の持つ力は大きいです。普段からポジティブシンキングにつながる言葉をストックしておくのがおすすめします。
ビリーフチェンジ
ポジティブシンキングを手助けするのに、紙とペンを用いるビリーフチェンジという方法があります。
まず、紙の中央に縦線を引き、線の左側にその日の出来事を箇条書きで書き出します。そしてネガティブな項目には印をつけて、線の右側にポジティブに捉え直して書き出します。
例えば
「タスク漏れがあって締切に間に合わなかった」→「仕事の進め方について見直す機会を与えられた」
「ミスを連発し、同僚や上司に迷惑をかけてしまった」→「ミスを減らせる仕組み作りのヒントになる」
など、失敗にフォーカスするのではなく、そこから得られることは何か?というように、考え方を変えてみるのがポイントです。
書き出すことで視覚化されるので、より思考が整理しやすくなるのがメリットです。。紙に書きだして繰り返すことでポジティブな考え方が習慣となれば、メンタルタフネスの向上が見込めます。
自分に自信をもつ
自分に自信をもつには、小さな成功体験を積み重ねることがとても大切です。
例えば、「1カ月に1冊は業務に関わる本を読む」「〇〇をできるようにする」など、どんな小さな目標でも構いません。具体的な目標を立て、行動を積み上げていくことが自信につながります。
また、長所をリストアップしたり、まわりに自分の長所をヒアリングしたり、強みを再確認してみるるのもひとつです。自分に自信がつけば、ネガティブな考えも自然と減っていきます。
自分を振り返ってみる
自分について客観的に振り返る時間を定期的に作りましょう。振り返る際は、できなかったことではなく、できたことについて振り返ることがポイントです。できたことを自覚すれば自信につながります。
メンタルタフネスを手に入れる習慣づくり
メンタルタフネスを手に入れるため、おすすめの習慣をいくつかご紹介します。自分に合うものを選んで、実践してみましょう。
感謝の気持ちを書き出す
感謝の気持ちを持つことで体内システムのバランスが取れ、ストレスが軽減されることが最近の研究でも分かっています。
その日にあったことや、対人関係、目標、現在おかれている環境などについて、感謝の気持ちを書き出してみましょう。小さなことや抽象的なことでも構いません。
3日1回、1週間に1回など、自分が続けられる頻度で行ってみてください。
自分にも優しく
人には優しくできるのに、自分に対しては厳しくなってしまうという人もいるのではないでしょうか。
ストレスを感じているときこそ、「こんなとき親友にだったら、なんて言葉をかけるだろうか」と、自分自身への言葉も慎重に選ぶようにしましょう。厳しすぎる自己批判は何も生み出しません。
気持ちに正直になる
自分の感情をきちんと自覚できている人は、ストレスフルな状況下でも客観的に自分を分析できるため、スムーズに問題への対処ができます。
何が嬉しくて、何が悲しくて、何が怖いのか。それが自分自身にどんな影響を与えているのか。自分自身が抱える感情について、じっくり考える時間をとってみましょう。
家族や友人と過ごす時間を増やす
家族や友人と過ごすという当たり前のようなことが、意外とおろそかになっていたりします。大切な人たちと過ごす時間を増やしてみるのも、精神の安定に役立ちます。
自分の価値観を信じる
価値観は、自分が本当に大切にしたいものといえます。
人に左右されるのではなく、自分なりの価値観をしっかり持ち、貫くことがメンタルを強くするために必要不可欠です。
メンタルタフネスチェック
メンタルタフネスのトレーニングは、今の自分の状況を知ることからはじまります。以下の25項目の中から、当てはまるものがいくつあるかチェックしてみましょう。
- ものごとをいつも難しく考えてしまう
- 将来の不安なことについて考えることがよくある
- 仕事の能率が悪い人を見るとイライラする
- 目標を達成できない人には我慢できない
- 短気で怒りっぽい性格だ
- 自分のことについて考え始めると止まらない
- いつも自分の感情を抑えてしまう
- 仕事で失敗した人間は責任を取るべきだ
- 人に頼まれると断れない
- 仕事での失敗は耐えられない
- やられたらやり返す方だ
- すべてにおいて心配性である
- 相談できる人が職場にいないと困る
- 周囲の人は私の仕事に協力してくれるべきだ
- 周囲の期待に応えた結果を常に出さなければならない
- いろいろと気疲れをすることが多い
- 顧客や取引先にいつも振り回されて大変だ
- 自分には特別な才能があるとは思えない
- いいたいことを我慢してしまう
- 仕事に貢献できることが少ないと感じる
- 仕事の目標達成のためには全力を注ぎ込むべき
- 人とよく口論になる
- 仕事で同僚に負けてはいけないと思う
- 目標は常に高く設定しなければいけない
- 上司は適切なサポートをしてくれるべきだ
チェック数が多いほど、ささいなことでもストレスを受けやすい状況にあるといえます。チェック数が16個以上ある人は要注意です。より物事を柔軟に考えるトレーニングを実践しましょう。
※判定結果はあくまで参考としてください。
まとめ
メンタルタフネスを鍛えることで、従業員のストレス軽減、うつ病予防といったメンタルヘルスケアの観点だけでなく、離職対策やエンゲージメントの向上など多くのメリットをもたらします。
人材育成に、メンタルタフネスの概念を取り入れてみてはいかがでしょうか。