上司と部下の信頼関係を築く「6つの秘訣」|双方が抱える「信じられない理由」を解消する

青空の下、ノートパソコンを手に笑顔で並んで歩きながら対話する上司と部下のビジネスパーソン

「部下を信頼して任せたいけれど、どうしても不安が勝ってしまう」「上司に信頼されていない気がして本音が言えない」
こうした悩みは個人の能力不足ではなく、組織構造が生み出す「信頼のズレ」が原因かもしれません。
最新の調査では、職場の半数以上が「部下は信頼しているが、上司が信頼しきれていない」という信頼の一方向不全に陥っていることが明らかになりました。
本記事では、この「信頼のミスマッチ」がなぜ起きるのかを解き明かし、上司と部下の信頼関係を築くための6つの具体的な秘訣を解説します。

信頼関係を阻む「視点のズレ」:双方が抱える本音

信頼関係が崩れている職場では、上司と部下の双方が「自分は歩み寄っているのに、相手が応えてくれない」という不満を抱えています。この「視点のズレ」こそが、不信感の正体です。
なぜ同じチームにいながらこれほどまでに感覚が食い違ってしまうのでしょうか。
それぞれの視点から、信頼が損なわれる決定的な瞬間を紐解きます。

【部下視点】上司を信じられなくなる瞬間

部下にとっての上司は、自分の評価を左右し、仕事の進め方を決定する大きな存在です。
だからこそ、日々の些細な振る舞いの中に「不誠実さ」や「無関心」を感じた瞬間、修復困難な亀裂が生まれます。
たとえば昨日言っていたことと今日の指示が異なったり、会議での発言と実際の行動が伴っていなかったりする「言動の不一致」は、部下の信頼を確実に失うことになります。
こうした一貫性の欠如を目の当たりにすると、部下は上司の言葉を「責任のないもの」と捉え、真剣に耳を傾けるのをやめてしまいます。
また、多忙を理由に相談を後回しにされることが続くと、部下は「自分の仕事は重要ではない」という無関心のサインを受け取ります。
結果だけを見てそのプロセスにある苦労や工夫を理解しようとしない姿勢は、部下にとって存在そのものを否定されたような感覚に近いものです。
一度「この人は自分の背景を見ていない」と感じれば、自発的に本音を話す意欲は急速に失われていきます。

【上司視点】部下を信じきれなくなる不安

一方で、上司側も「部下を信じたいが、どうしても信じきれない」という葛藤を抱えています。
これは個人の性格というよりも、管理職という「立場」がもたらす構造的なプレッシャーが原因です。
上司にとって、部下の失敗はそのまま自分自身の責任として跳ね返ってきます。
何かあったときに最終的な責任を取るという重圧があるからこそ、部下の甘い見通しやケアレスミスに対して過敏になり、信頼にブレーキがかかってしまうのです。
さらに、業務の状況が完全に見えないことによる「任せる怖さ」も不信を加速させます。
進捗が見えない不安からつい細かく口を出したり、頻繁な確認を求めたりするマイクロマネジメントに走ってしまいますが、上司にとってのこうした干渉は、相手を疑っているというよりも、自分自身の不安を解消するための防衛策である場合が少なくありません。

調査データで見る「信頼の一方向不全」という構造的欠陥

上司と部下の間に生まれる不信感の溝は、単なるコミュニケーションの技術不足だけでは説明できません。最新の調査結果からは、日本の組織が抱える根深い構造的問題が浮き彫りになっています。

52.4%の職場で起きている「部下の片思い」状態

パーソル総合研究所と九州大学による2025年の共同研究では、上司と部下の関係性において衝撃的な事実が明らかになりました。
上司と部下の信頼関係に関する研究│株式会社パーソル総合研究所 

調査対象となったペアのうち、実に52.4%が「部下は上司を信頼しているが、上司が部下を信頼しきれていない」という、いわゆる信頼の一方向不全に陥っているというのです。
これは、多くの人が抱く「部下は上司を嫌っている、信じていない」という一般的なイメージとは大きく異なる実態です。
部下側は、仕事の評価やキャリアの支援を求めて上司に一定の期待や信頼を寄せている一方で、上司側は「この部下に任せて大丈夫か」という不安を拭いきれず、心理的なブレーキがかかっている状態を指しています。
リーダーが部下を信じきれないという「信頼の欠如」こそが、現在の組織における最大のボトルネックになっていることが分かります。

どちらかが悪いのではなく「鏡」の関係にある

この一方向不全という状態は、どちらか一方の性格に問題があるというよりも、お互いの反応が連鎖して抜け出せなくなる「負のらせん」のような構造をしています。
信頼関係は、相手の出方によって自分の振る舞いが決まる「鏡」のような性質を持っているからです。

たとえば上司が部下の能力を疑って細かく監視を強めると、部下は「自分は信じられていない」と感じて萎縮し、ミスを隠したり報告を遅らせたりするようになります。
その様子を見た上司は「やはりこの部下には目を光らせていなければならない」と不信感をさらに強め、監視がさらに厳しくなっていきます。

このように、上司の不安が部下の不自然な動きを生み、それがまた上司の不安を増幅させるという悪循環が、52.4%もの職場で日常的に繰り返されています。この構造を理解しないまま相手を責め合っても、信頼の溝が埋まることはありません。

信頼関係を築くための「6つの秘訣」

明るいオフィスで互いに向き合い、親身になって話を聞く女性の上司と部下

信頼関係を「負のらせん」から「正のらせん」へと転換させるためには、精神論ではなく具体的な行動の積み重ねが必要です。
双方のズレを解消し、心理的な安全性を高めるための6つの秘訣を解説します。

1.「任せる範囲」と「責任の所在」を事前に合意する

上司が抱く「任せる怖さ」と、部下が感じる「監視されている不快感」を解消するには、業務を開始する前にルールを明確にすることが不可欠です。
どの程度の判断までを部下に委ね、どのような状況になれば上司が介入し責任を引き受けるのか、その境界線をあらかじめ握っておきます。
この合意があることで、部下は「ここまでは自分の責任だ」という当事者意識を持って動けるようになり、上司も過度な干渉を抑えることができるようになります。

2. 判断の背景を共有し、情報の非対称性をなくす

組織において上司と部下では持っている情報の量や質にどうしても差が生まれますが、この「情報のズレ」が疑心暗鬼を生むきっかけになります。
指示を出す際には単に「何をすべきか」を伝えるだけでなく、なぜその決定に至ったのかという背景や理由をオープンに共有することが重要です。
判断の根拠がはっきりすることで、部下は納得感を持って動くことができ、上司への「何か隠されているのではないか」という不安も消えていきます。

3. お互いの「期待値」を言語化してすり合わせる

信頼のミスマッチの多くは、お互いが「これくらいやってくれるだろう」という暗黙の期待を抱き、それが裏切られたときに発生します。
このズレを防ぐには上司が求める成果の基準や、部下が求めるサポートの形を具体的な言葉にしてすり合わせる作業が必要です。
基準が目に見える形になることで評価の際の不公平感がなくなり、お互いにとって「裏切られない安心感」が育ちます。

4. 結果だけでなく、プロセスにおける「意図」を承認する

成果が出なかったときすぐに否定的な評価を下すのではなく、その行動をとった「背景にある意図」に目を向ける姿勢が信頼を深めます。
結果が伴わなかったとしても、そのプロセスでどのような工夫をし、どのような目的を持って動いたのかを上司が承認することで、部下は「自分の考えが尊重されている」と感じることができます。
この承認が、失敗を恐れずに挑戦する主体性を引き出す鍵となります。

5. 評価権を持つ上司が“先に”自己開示する

信頼関係においてより大きな権限を持つ側がまず心を開くことは、心理的安全性を高めるための鉄則です。
上司が自身の失敗談や弱みを隠さず話すことで、部下は「完璧でなくても受け入れてもらえる」と確信し、自身の悩みやミスを早期に共有できるようになります。
評価される側の部下に自己開示を求める前に、まず上司が人間味のある姿を見せることが、双方向の信頼を築くための第一歩となります。

6. 感謝と敬意を「具体的な言葉」にして出し惜しみしない

日々の業務を「やって当たり前」と見過ごさず、貢献に対して明確な言葉で感謝を伝えることは信頼を積み上げる最も確実な方法です。
「助かった」「この分析は非常に役立った」といった具体的なフィードバックは、自分の存在が認められているという実感に繋がります。
一人の人間としてリスペクトを持って接する姿勢は、立場を超えた強固なパートナーシップの土台となります。

組織の「見えない心のズレ」を可視化する

信頼関係の構築を個人のスキルや努力だけに頼るのには限界があります。
特に今回の調査で明らかになった「信頼の一方向不全」のような構造的な問題は、当事者同士が頭では理解していても、どこに解決の糸口があるのかを見つけるのが難しいものです。
こうした目に見えない組織のコンディションをデータで明らかにし、改善のサイクルを回すための仕組みとして注目されているのが「ラフールサーベイ」です。

ラフールサーベイは、単なる従業員満足度の調査にとどまらず、働く人のメンタル・フィジカルの状態や、エンゲージメント、さらには職場の人間関係といった多角的な視点から組織の実態を分析します。
このツールの最大の特徴は、数値の結果を出すだけでなく、「なぜそのスコアになったのか」という背景にある要因まで深掘りできる点にあります。

たとえば上司と部下の間で信頼関係に課題があるとわかった際、それがコミュニケーションの量の不足なのか、あるいは評価基準への不納得感なのかといった具体的な理由を特定できます。
原因がはっきりすれば、この記事で紹介した「6つの秘訣」のうち、どこから手をつければよいのかという具体的な対策が見えてきます。
客観的なデータを共通言語にすることで、感情的な対立を避け、建設的な対話を通じた関係の立て直しをサポートしてくれます。

信頼関係を深化させる「被信頼感」の重要性

信頼関係を築く上で自分が相手を信じることと同じくらい重要なのが、相手に「自分は信じられている」と実感させることです。
これを専門用語で「被信頼感」と呼びます。単に心の中で信頼しているだけでは不十分で、その実感を相手に届けることが、組織の生産性を大きく左右します。

「信頼している」と伝えることで、確認作業が減る理由

上司が部下に対して「君の判断を信頼している」と明確に伝え、それが相手に届くと、不思議なことに日々の細かな確認作業が減っていきます。
部下は「信じられている」という安心感を得ることで、過度に顔色をうかがったり、責任逃れのための形式的な報告をしたりする必要がなくなるからです。
上司側も「任せた」と宣言することで、自分の中にあった「細部まで監視しなければ」という強迫観念から解放されます。
お互いが疑心暗鬼の状態で繰り返していた「念のための確認」が削ぎ落とされることで、業務のスピードは劇的に上がり、本質的な仕事に集中できる時間が生まれます。

部下が「任されている」と感じたときに起きる行動変化

人は「自分は信頼され、重要な役割を任されている」と強く実感したとき、指示を待つだけの姿勢から、自ら考えて動く当事者意識へと大きく変化します。
信頼されているという実感が失敗を恐れるブレーキを外し、「期待に応えたい」という前向きなエネルギーに変換されるためです。

この変化は、報告の質にも現れます。信じられていると感じている部下は、悪いニュースほど早く上司に伝えようとします。
これは「隠して怒られるのが怖い」という恐怖心よりも「信頼してくれている上司に、早く伝えて一緒に解決したい」という心理が勝るためです。
結果として、トラブルの早期発見につながり、チーム全体のリスク管理能力が高まっていくという好循環が生まれます。

1on1を「信頼のメンテナンス」の場にアップデートする

屋外のベンチに座り、リラックスした表情で本音を語り合い笑い合う2人の男性ビジネスパーソン

これまでに挙げた信頼の秘訣を日常的に実践し、お互いのズレを微調整し続けるための仕組みが1on1です。
単なる進捗確認の場から、お互いの信頼を深めるための貴重な対話の場へとアップデートするためのポイントを整理します。

進捗報告ではなく「対話」を優先するルール

多くの職場で1on1が形骸化してしまう最大の原因は、それが「業務の進捗報告」で終わってしまうことにあります。
報告だけであればメールやチャットで十分です。1on1の時間は、数字や期限の裏側にある「部下が今どんな気持ちで仕事に向き合っているか」や「上司が何を基準に判断しているか」を共有する対話に充てるべきです。
「今日は進捗の話は抜きにして、最近のコンディションや困っていることについて話そう」と冒頭で宣言するなど、業務報告と対話を明確に分けるルールを作ることが質の高いコミュニケーションの第一歩となります。

部下の本音と成長意欲を引き出す問いかけ

部下の本音を引き出すためには、上司の問いかけの質が重要です。
「順調?」といった抽象的な問いではなく「最近、一番やりがいを感じた瞬間はいつ?」「今、仕事を進める上で一番の壁になっていることは何?」といった具体的なエピソードや感情を深掘りする問いを投げかけます。
上司が答えを出すのではなく、部下が自分の考えを言葉にするのをじっくり待つ姿勢が部下の自己効力感を高めます。
「この人は自分の話を遮らずに聞いてくれる」という安心感こそが成長意欲に火をつけ、深い信頼へとつながっていきます。

継続的なフィードバックが信頼のインフラになる

信頼関係は一度築けば終わりではなく、道路や水道のように常に手入れが必要な「インフラ」のようなものです。
半年に一度の面談などではなく、週に一度や隔週といった短いスパンでの継続的なフィードバックが欠かせません。
日々の小さなズレをその都度修正していくことで、大きな不信感に育つのを防ぐことができます。
良い点はその場ですぐに称賛し、課題点は「期待しているからこそ伝える」という姿勢で共有する。この積み重ねが、揺るぎない組織の土台を作ります。

まとめ:信頼は上司の「先出し」から始まる

信頼関係とは、どちらかが完璧になったら成立するものではなく、お互いの不完全さを認め合うことから始まります。
「信頼のミスマッチ」を解消するために最も効果的なのは、評価権を持つ上司の側から先に部下を信頼することです。

まだ結果が出ていない部下を信じて任せることにはリスクや不安が伴います。
しかし、上司がそのリスクを引き受け「まずは自分から信じてみる」という一歩を踏み出さない限り、部下が心を開いて主体的に動き出すことはありません。
上司が先に心を開くことで、はじめて部下の中に「期待に応えたい」という気持ちが芽生え、信頼のらせんが正の方向へと回り始めます。
こうした「関係の質」を高めるための働きかけは、一見すると遠回りに思えるかもしれません。
しかし互いに疑心暗鬼のまま監視し合うコストを考えれば、信頼をベースにしたチーム作りこそが業績を向上させるための最短距離となります。

今日からできる小さな一歩として、まずは部下への感謝を言葉にしたり、判断の背景を共有したりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
その小さな変化が積み重なり、やがて組織全体を支える揺るぎない土台となっていくはずです。

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