産業医とは?医師との違い・仕事内容・選任が必要な事業場を解説

労働者の健康管理を行う産業医は、一定規模の事業場で選任が義務付けられるほど重要な役割を担っています。

その一方で、

「産業医って結局どういう人物なの?」

「選任が必要な事業場の条件ってなんだろう」

と疑問を抱いている方も多いかもしれません。

そこで今回は産業医について、医師との違いや仕事内容を詳しく解説します。

また選任が必要な事業場や、設置によるメリットについてもまとめているので、経営層や社員の健康管理に関わる人事担当者の方もぜひ参考にしてください。

産業医とは?

産業医とは、事業場における労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を指します。

事業者は事業場の規模に応じて産業医を選任することが義務付けられており、産業医に労働者の健康管理等を行わせなければなりません。

厚生労働省の発表によると現在、産業医の養成研修・講習を修了した医師は全国に約9万人おり、実働しているのは約3万人と報告されています。

産業医の資格を取得した医師数は年度ごとに増加しており、平成27年度では約3400人が新たに産業医の資格を取得しています。

産業医が活きる組織診断サーベイ

下記の資料では、
・産業医の「役割と業務内容」の基本
・企業と産業医それぞれが抱く課題とは
・産業医との連携で有効なサーベイ活用方法

など、人事労務担当者が知っておくべき産業医の知識について解説していますので、合わせてお役立てください。

産業医の要件 

産業医は、労働者の健康管理等を行う専門性を確保するため、医師であることが前提とされます。

また労働安全衛生法第13条2項に基づき、「産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者」と規定されています。

ここで定められている要件とは以下の4つであり、いずれかの要件を備えた者から選任する必要があるのです。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者

(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指

定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者

(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者

(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれら

の経験者

産業医と通常の医師の違い

産業医と通常の医師の大きな違いは、医療行為を行う「対象人物」です。

通常の医師は病気を患っている「患者」が対象ですが、 産業医は「労働者」が対象です。

そのため医師は主に病院において、病院に来院した患者の治療を行います。

一方で産業医は選任された企業において、労働者の健康管理や職場管理に取り組むのです。

また両者は立場も異なり、医師は患者の味方として医療行為を行いますが、産業医は事業主と労働者の中立の立場が求められます。

産業医は労働者の健康管理を行うことが職務であり、医療行為は行えません。

例えば、インフルエンザの予防接種は医療行為であるため医師が行います。

そして産業医の多くは、普段は医師として勤務する嘱託産業医です。

つまり産業医は選任された企業では産業医として勤務し、普段は病院などで医師として勤務している場合がほとんどです。

社員は企業に選任された産業医に対し、企業で産業医として勤務している際は医療行為を受けられません。

しかし産業医が医師として勤務している病院などに来院することで、患者として受診が可能です。

2020/06/09
メンタルヘルス対策はなぜ重要?予防の仕方と早期発見に役立つツール
企業にとってメンタルヘルス対策は、健全な組織運営と切り離せません。 ただ、「そもそもメンタルヘルスがどうして企業にとって重要なの?」「メンタルヘルス対策をするには、具体的にどんな取り組みが必要なの?」そう思ってい...
続きを見る

産業医の仕事内容 

産業医の職務は、労働安全衛生規則第14条第1項において内容が定められています。

具体的な仕事内容としては次の4点です。

・職場の巡視

・社員の健康診断後のチェックとフォロー

・過重労働者との面談

・安全衛生委員会を開催

1つずつ解説していきます。

職場の巡視 

職場の巡視は、労働安全衛生規則第15条にて定められています。

具体的には、少なくとも毎月1回作業方法や衛生状態における問題の有無を確認するのです。

例えばオフィス環境や、防災・安全環境、受動喫煙対策などをチェックします。

有害な恐れがある場合には、直ちに労働者の健康障害を防止するための必要な措置を講じなければなりません。

社員の健康診断後のチェックとフォロー 

健康診断の事後措置については、労働安全衛生法第66条にて定められています。

産業医は健康診断の結果に基づき、 面談などを通して従業員に生活指導や休養を指導します。

必要に応じて事業主は、産業医の意見をもとに就業上の措置を取らなければなりません。

産業医は従業員に対し配置転換や休暇が必要だと判断した場合には「就業場所の変更」や「労働時間の短縮」などの判定を行い、「意見書」を作成します。

また「定期健康診断結果報告書」の提出には、産業医の押印が必要です。

定期健康診断結果報告書は、常時50人以上労働者を使用する事業場が所轄労働基準監督署に提出しなければならない報告書です。

当てはまる事業場は、産業医の押印を忘れないよう注意しましょう。

過重労働者との面談

労働安全衛生法には、長時間労働による疲労が蓄積された労働者と産業医の面談指導の実施が義務付けられています。

長時間労働による疲労の蓄積は健康障害発症のリスクであるとされ、産業医はその健康状況を把握した上で指導を行い、結果を踏まえた事後措置を行います。

面談は労働者の状況に応じ、様々な内容での対応が可能です。

例えばメンタルヘルス面の相談や、休職/復職の判定など、労働者の心身の健康増進を目指し行われます。

安全衛生委員会を開催

安全衛生委員会とは、労働者の危険または健康障害を防止するための重要事項について、十分な調査審議を行う会です。

調査審議される内容は、各部署における長時間労働の報告や、労災の取り組み計画の作成、産業医によるの講話などです。

毎月1回以上開催し、話し合われた内容は労働者に周知することが求められています。

産業医を選任しなければならない事業場の基準

産業医を選任しなければならない事業場の基準

常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、事業者は産業医を選任しなければなりません。

ここで言う「事業場」とは、同じ場所で関係する組織的な作業が行われている場所を指します。

つまり、「同じ場所であっても業態が異なる」場合や、「2つの離れた場所で同じ業態を行なっている」という場合は、1つの事業場ではなく別々の事業場です。

そのため、同じ会社であっても支社や支店、営業所、店舗ごとに1事業場とみなされます。

そして事業場の規模や事業内容によって、選任する産業医の人数や形態は異なります。

異なる内容について、次の3つの項目に沿って確認しましょう。

・選任する産業医の数の違い

・嘱託産業医と専属産業医の違い

・産業医を選任していなかった場合

それぞれ詳しく解説していきます。

選任する産業医の数の違い

事業場の労働者数に応じて、選任する産業医数や産業医の形態が異なります。

・50人未満:産業医の選任義務はなし

・50~499人:嘱託産業医1名

・500人~999人:嘱託産業医1名、ただし有害業務の場合は専属産業医1名

・1000人~3000人:専属産業医1名

・3001人以上:専属産業医2名

「嘱託産業医」とは、非常勤の産業医を指します。

「専属産業医」とは、その事業場における専業の産業医です。

また契約社員・派遣社員・アルバイトなどの非正規雇用の従業員は労働者に含まれるものとします。

雇用形態に関わらず、事業場で働く全ての社員の健康増進に努めましょう。

嘱託産業医と専属産業医の違い 

事業場に選任される産業医には、嘱託産業医と専属産業医の2種類があります。

両者は勤務形態が異なり簡単に説明すると、「嘱託産業医」は非常勤の産業医、「専属産業医」はその事業場における専属の産業医です。

この章では両者の違いをさらに詳しく解説するので、自身の事業場に選任する産業医について確認しておきましょう。

嘱託産業医とは 

嘱託産業医は普段は病院やクリニックで医師として勤務し、1ヶ月に1〜数回程度の頻度で事業場において産業医として勤務する医師です。

選任が必要な事業場として、

労働者数50~499人:嘱託産業医1名

労働者数500人~999人:嘱託産業医1名、ただし有害業務の場合は専属産業医1名となります。

日本における多くの産業医は嘱託産業医であり、かかりつけ医としての機能も期待されている産業医です。

専属産業医とは 

専属産業医は事業場専属の産業医として選任され、その事業場に専念した業務に従事します。

選任が必要な事業場は、常時1000人以上の労働者を使用する事業場と、有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場が当てはまります。

また常時3000人を超える事業場では、専属産業医を2人以上選任しなければいけません。

産業医を選任していなかった場合

労働安全衛生法では、一定規模の事業場で産業医の選任が義務付けられています。

もしも条件に当てはまる事業場が産業医を選任していなかった場合、法律違反の罰則として50万円以下の罰金に処することが規定されています。

併せて労働安全衛生法第13条では、選任の期限についても記載されています。

・産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること

さらに産業医の辞任、解任に関しても労働安全衛生規則第13条において記載があります。

・事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

産業医の選任だけでなく、辞任や解任に関しても忘れずに実施や報告を行いましょう。

産業医の設置が企業にもたらすメリット 

産業医設置による企業のメリットがこちらです。

・健康に対する意識向上

・企業のイメージ向上

改めて内容を確認しましょう。

健康に対する意識向上

産業医という専門家による直接的な健康指導や管理によって、社員の健康意識が向上されます。

産業医による定期的な労働者への声がけや健康教育は、社員が自身の健康状態を見つめ直すきっかけとなります。

心身の状態と向き合える機会があることで、メンタルヘルスの不調を未然に防げる可能性も高まるでしょう。

適切な健康状態を保てると、業務へのモチベーションや集中力も高まります。

そのため企業にとっては社員の健康意識向上によって、業務効率の改善や生産性向上に期待できるのです。

企業のイメージ向上 

健康管理の実施は社員を大切に扱っている印象となり、社内外へプラスのイメージを与えます。

社員を不当に扱っていそうな会社には世間から良い印象はなく、ブラック企業として認知される可能性もあります。

一方で社員の健康増進に取り組む会社は世間や求職者からの評価が高く、入社の競争率は高い傾向にあります。

また社員が自身の会社に良いイメージを持てることは帰属意識の高まりとなり、業績や利益の向上に近づくでしょう。

産業医の選任にあたって 

産業医の選任に際して、現代の傾向として以下の動きがあります。

・産業医には、幅広い業務や健康増進への高い意識が求められている

産業医の職務は法令上で定められていますが、環境の変化に応じた幅広い活動が求められています。

例えばテレワークや在宅勤務など、労働者の働き方は従来とは異なる多様性を有しています。

そのため、法令上定められた内容だけでは労働者の健康管理を行えきれない可能性があるのです。

適切な健康管理を行うには、企業ごとに即した対策や管理方法を検討し実施する必然性が増してきています。

同時に企業としては、労働者の健康管理への高い意識を持った産業医を望む傾向が強くなっています。

法令を守っただけの職務では、現実的な健康管理や増進は難しいためです。

効果的な健康管理を実現するには、社内の就業規則や業務内容、実際の仕事への取り組み方など会社への理解を深めてもらう必要があります。

現状や実態を把握した上で職務に取り組むことで、有益な健康管理に期待が高まっています。

産業医による労働環境をより良くしようとする意識のもと行われる多様な働きによって、企業は真の社員の健康管理を実現できるのです。

社員の心身の健康状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ

「ラフールサーベイ」は、社員の心身の健康状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

ストレスチェックや勤怠データに加え、ラフールサーベイで得られるデータをもとにアドバイスをしたり、衛生委員会などでご活用いただけます。

3分でわかる!『ラフールサーベイ』概要資料

ラフールサーベイの機能や特徴を3分でお読みいただける資料にまとめました。以下からダウンロードいただけます。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

141項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で141項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約84項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

まとめ

今回は産業医の仕事内容や選任が必要な事業場、設置によるメリットについて紹介しました。

労働者の心身の健康を守る産業医は、専門的な立場による的確な指導や助言をしてくれる重要な存在です。

社員の健康なくしては企業は成り立たず、社員の健康が保たれると活力ある職場作りに役立ちます。

企業として産業医の選任はもちろん、体調や心情の変化にいち早く気づけるよう、相手を気遣った思いやりのあるコミュニケーションを心がけましょう。

ラフールサーベイ

ストレスチェックから働き方改革まで
ラフールサーベイなら対策を立てやすい。

多角的なオリジナルサーベイで、ハラスメントリスク、離職リスク、エンゲージメントなど、組織の様々な課題を可視化できる事で、具体的な対策に繋がっていきます。
オンラインセミナーも開催中。