エグジットインタビューとは?退職者の本音を聞き出す質問例と実施マニュアル

インタビュー

「一身上の都合」で片付けられてしまう退職届。しかし、企業が本当に知るべきなのは、その裏にある「本当の退職理由」です。 なぜ優秀な人材が去ってしまうのか? 組織のどこに問題があったのか? これらを明らかにする手法として注目されているのが「エグジットインタビュー(退職者面談)」です。本記事では、エグジットインタビューの定義や目的といった基礎知識から、決して建前で終わらせないための「本音を引き出す質問のコツ」、そして得られたデータを組織改善につなげる具体的な手法までを網羅的に解説します。離職防止と組織力強化を目指す人事担当者様は、ぜひ参考にしてください。

エグジットインタビューとは

エグジットインタビューの定義

エグジットインタビュー(Exit Interview)とは、退職が決まった従業員に対して行うヒアリング面談のことです。

単なる事務的な退職手続きの場ではなく、「なぜ退職を選んだのか」「組織のどこに課題があったのか」といった定性的なデータを収集し、組織改善に役立てることを主目的としています。

通常の「退職面談(慰留面談や手続き)」とは異なり、引き留めを行わず、純粋な情報収集とフィードバックの場として機能させることが重要です。

エグジットサーベイとの違い

類似の手法に「エグジットサーベイ」がありますが、両者は手法と得られるデータに違いがあります。

  • エグジットサーベイ
    アンケート形式。選択式の回答が多く、定量データの収集に向いています。回答者の負担が少なく、データを数値化して経年変化を追いやすいのがメリットです。
  • エグジットインタビュー
    面談形式。対話形式で行うため、定性データの収集に向いています。「なぜそう思ったのか」という背景や感情、具体的なエピソードまで深掘りできるのがメリットです。

最も効果的なのは、サーベイで全体傾向を掴みつつ、インタビューで深い要因を探るという組み合わせ活用です。

企業が実施する背景

昨今、多くの企業がエグジットインタビューを導入する背景には、人材流動化の加速があります。

終身雇用が崩壊し、転職が当たり前となる中で、企業は「選ばれる立場」になりました。離職率の増加は経営リスクに直結するため、離職防止施策が急務です。また、「退職したら関係性が終わり」ではなく、将来的な再雇用(アルムナイ/出戻り社員)やビジネスパートナーとして捉え直す動きも、実施の後押しとなっています。

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エグジットインタビューの目的

離職理由の正確な把握

退職願に書かれる「一身上の都合」や、上司に伝える「キャリアアップのため」という理由は、円満退職するための建前であることが大半です。

インタビューを通じて、給与、人間関係、評価制度など、退職を決意させた決定的な原因を把握します。離職の根本原因を理解することで、今後の離職率低下につなげることができます。

組織課題の特定

退職者は在職者よりも率直に意見を述べやすいため、職場の問題点や改善すべき点について貴重なフィードバックが得られます。

個人の不満の裏には、組織の構造的な問題が隠れていることが少なくありません。「特定の部署でパワハラ気質がある」「評価基準が曖昧でモチベーションが下がる」といった、現場に埋もれている組織課題を特定します。

従業員体験(EX)向上

退職者から得たネガティブなフィードバックを改善することで、現在働いている従業員の満足度(EX:Employee Experience)を高められます。「辞める人のため」ではなく、「残る人のため」の施策です。

再雇用への布石

最後に会社への不満を吐き出してもらい、会社側が「貴重な意見として改善する」という姿勢を見せることで、退職時の心象を良くすることができます。これは将来、他社で経験を積んだ後に戻ってきてもらう「ブーメラン社員」の可能性を高めます。

エグジットインタビューのメリット

客観的なフィードバック

エグジットインタビューは、忖度のない率直な意見が聞ける貴重な機会です。在職中の従業員よりも客観的なフィードバックを獲得できるため、組織改善のヒントが得られます。

退職者にとっても、不満や改善提案を伝えられるため、気持ちよく次のステップへ進めるようになります。

離職率改善・定着率向上

退職理由のパターン分析により、離職予備軍への早期対策が可能になります。具体的な対策を打つことで、長期的な定着率向上に寄与します。

マネジメント改善

「特定のマネージャーの下で離職が続く」といった事実が可視化されれば、そのマネージャーへの教育や配置転換など、適切なマネジメント改善策を講じることができます。

企業ブランド向上

「去る者に対しても誠実に向き合う企業」という評判は、退職者の口コミ(SNSや転職者向けサイトなど)を通じて広がり、採用ブランディングにも好影響を与えます。

エグジットインタビューの実施タイミングと準備

タイミング

最適なタイミングは、退職手続き完了後〜最終出社日の数日前です。

評価や退職金への影響がないことが確定し、かつ業務の引き継ぎもある程度落ち着いたタイミングであれば、退職者の心理的なハードルが下がり、本音が出やすくなります。

ただし、退職後の「アルムナイ」を対象にインタビューを実施するケースもあります。この場合、在職中は見えにくかった点や、他社での経験を通じて初めて認識した自社の特徴が語られることが多く、退職予定者の声とは異なる、相対的かつより客観的なフィードバックを得ることができます。

会場設定・面談時間の目安

エグジットインタビューは社内の会議室でも可能ですが、周囲に会話が漏れない個室、あるいはオンラインでの実施が推奨されます。

また面談時間は30分〜60分程度で、じっくり話を聞く時間を確保します。

担当者

誰が聞くかによって、退職者の本音の出やすさは大きく変わります。

  • 直属の上司
    離職原因が上司本人であるケースが多く、本音が隠されるリスクが最も高いです。一方で、離職の原因が別のところにあり、上司との信頼関係が築けている場合には、「上司になら話せる」と感じる退職者もいるでしょう。
  • 人事担当者・経営層
    現場の利害関係がないため話しやすいですが、現場のリアルな空気感が伝わりにくい場合があります。
  • 第三者機関(外部委託)
    利害関係が全くないため、最も本音を引き出しやすい方法です。一方で、コストがかかるのが懸念点です。

【テンプレート付】エグジットインタビューの質問例と聞き方のコツ

質問例

①退職のきっかけ・理由に関する質問例

「退職を考え始めたのはいつ頃からですか?」

「退職を決意した決定的な出来事はありましたか?」

「その時点で会社は何ができたと思いますか?」

「新しい職場を選んだ決め手は何ですか?(給与、働き方、業務内容など)」

②職務内容に関する質問例

「担当していた業務についてどう感じていましたか?」

「仕事のやりがいを感じた瞬間はありましたか?」

「スキルや能力を十分に活かせましたか?」

「キャリア成長の機会は十分にありましたか?」

③職場環境に関する質問例

「職場の雰囲気についてどう思われましたか?」

「チームメンバーとの関係性はいかがでしたか?」

「ワークライフバランスは保てていましたか?」

「オフィス環境や設備について改善点はありますか?」

④マネジメントに関する質問例

「上司からのサポートは十分でしたか?」

「フィードバックやコミュニケーションの頻度は適切でしたか?」

「評価制度は公平だと感じましたか?」

「意思決定プロセスについてどう思われましたか?」

⑤組織・制度に関する質問例

「給与や福利厚生については満足されていましたか?」

「研修や育成プログラムは役立ちましたか?」

「会社のビジョンや方向性に共感できましたか?」

「社内のコミュニケーションは円滑でしたか?」

⑥建設的なフィードバックを促す質問例

「当社で最も良かった点は何ですか?」

「改善すべき点を3つ挙げるとしたら何ですか?」

「後任者や同僚にアドバイスするとしたら何ですか?」

⑦最後の質問例

「他に伝えておきたいことはありますか?」

オープン質問とクローズ質問の使い分け

基本的な質問の仕方には、Yes/Noで答えてもらうクローズ質問と、自由回答のオープン質問があります。

会話の初期は答えやすいクローズ質問から入り、事実確認をしたうえで、徐々にオープン質問へ移行して深層心理を探るのがコツです。

例えば、非常に答えにくい「人間関係」の問題を、Yes/Noで聞くことでハードルを下げます。

「上司やチームメンバーとの人間関係は、退職の決断に影響しましたか?」
「具体的なハラスメント(パワハラ・セクハラ等)や、コンプライアンスに関わる言動はありましたか?」
「その問題について、人事や他の管理職に相談したことはありますか?」
「その原因となる対象は、直属の上司にあたりますか?」

Yesの場合には、オープン質問でさらなる深掘りを行います。

「上司(またはチーム)がどのような関わり方をしてくれていれば、退職を思いとどまった可能性がありますか?」
「具体的に、どのような言葉や行動に対して『働きづらさ』を最も感じましたか?」
「今後、同じようなミスマッチを防ぐために、どのような人がこのチームに向いていると思いますか?」

エグジットインタビューの結果を組織改善につなげる5つのステップ

退職者から得られた貴重なデータを「聞きっぱなし」にしては意味がありません。組織の課題を浮き彫りにし、健全な体制を作るためには、以下のフローでデータを活用することが重要です。

5つのステップ

1. 情報の整理とカテゴライズ

まずは収集したデータを体系的に整理します。「給与」「人間関係」「キャリアパス」「労働環境」など、退職理由をカテゴリー別に分類しましょう。こうすることで、個人の主観的な意見だけでなく、組織全体に共通する不満や傾向が見えてきます。

2. 定量・定性データの多角的分析

データは「数値(定量)」と「生の声(定性)」の両面から分析します。「〇%が環境不満」という数値だけでなく、具体的なエピソードを合わせることで、課題の解像度が高まります。これにより、組織の強みと弱みを客観的に把握できるでしょう。

3. 具体的な改善アクションの策定

分析結果をもとに、対策を練ります。例えば「柔軟な働き方ができない」という声が多ければ、リモートワークやフレックス制度の導入を検討します。この際、単に人事だけで決めるのではなく、現場のリーダーや関連部署を巻き込んで現実的なプランに落とし込むことが不可欠です。

4. 優先順位をつけた段階的実施

すべての課題を一度に解決するのは困難です。リソースや予算を考慮し、優先度が高いものから段階的に施策を実行しましょう。

5. 効果検証とPDCA

施策を実行して終わりではありません。例えばリモートワーク導入後、実際に離職率が下がったのか、生産性は向上したのかを定期的にモニタリングします。結果に基づき、制度のブラッシュアップを続ける姿勢が求められます。

エグジットインタビューを成功させるポイント

目的の共有

面談の冒頭で、「引き留めではないこと」「会社をより良くするために、あなたの率直な意見が必要であること」を明確に伝えます。

匿名性の確保/評価に影響しないと明言

「この内容は誰にも個人が特定される形では伝わらない」「退職金や転職活動への影響は一切ない」と約束することで、心理的な安全性を確保します。

オープンな雰囲気づくり

事務的な尋問にならないよう注意します。リラックスした雰囲気を作り、「どんなネガティブな意見でも歓迎する」という姿勢を見せます。

傾聴姿勢

退職者の声には、遮らず・反論せずに耳を傾けましょう。退職者の意見が、会社側の認識と違っていても絶対に反論や言い訳をしてはいけません。

「そう感じていたんですね」「気づけなくて申し訳なかった」と、相手の主観的事実を受け止める「傾聴」に徹してください。

メモ・録音の取り扱い

メモを取る際は「正確に記録したいのでメモを取らせてください」と断りを入れます。PCでのタイピングより、手書きの方が相手への威圧感が少なくおすすめです。録音は警戒されるため、基本的には避けたほうが無難です。

よくある課題と対処法

退職者の本音が聞けない

退職者インタビューにおいて、「当たり障りのない回答しか得られない」という悩みは、多くの企業が抱える共通の課題です。本音を引き出せない主な原因には、退職者が抱える以下の3つの心理的ハードルが関係しています。

  • 報復やキャリアへの懸念
    :「将来どこかでまた関わるかもしれない」「業界が狭く、悪い評判が立つのが怖い」という不安から、防衛的になるケースです。
  • 信頼関係の不足
    :面談者との信頼関係が築けていない場合、本音は語られません。特に直属の上司が相手では、言いにくいことが大半です。
  • 「言っても無駄」という諦め
    :「意見を伝えたところで会社は変わらない」という無力感が、発言への意欲を削いでいます。

これらの心理的バリアを取り除くためには、以下の対策が有効です。

  • 匿名性の担保と明示
    :発言内容が個人に紐づかないこと、人事評価や将来のキャリアに影響しないことを明確に伝え、心理的安全性を確保します。
  • 第三者によるヒアリング
    :利害関係のある直属の上司ではなく、人事担当者や外部の専門家が担当することで、客観的で率直な意見が出やすくなります。
  • 退職後のインタビュー実施
    :退職から一定期間が経過し、感情が整理されたタイミングで実施することで、より客観的なフィードバックが得られる場合があります。
  • 改善実績の共有
    :過去のインタビューから実際に制度が改善された事例を伝えることで、「自分の声が役立つ」という効力感を持ってもらいます。

退職者から拒否される

「もう辞める会社に関わりたくない」「面倒くさい」と拒否されることもあります。この場合、無理強いはNGです。ただし、拒否される原因が「面談の日程調整が面倒」「拘束時間が長い」であれば、オンライン面談への切り替えや、アンケートの実施などの負担を減らした代替案を提案しましょう。

また、可能な範囲で面談拒否の理由を確認できれば、今後の退職プロセスのヒントとして活かすことができます。

質問項目がブレる

担当者によって聞く内容がバラバラだと、データ分析ができません。

質問リストをテンプレート化し、マニュアルを作成して標準化を図りましょう。

まとめ

エグジットインタビューは、去りゆく社員からの「最後の贈り物」です。

耳の痛い話も多いかもしれませんが、そこには組織を成長させるための重要なヒントが詰まっています。

「なぜ辞めるのか」を真摯に受け止め、残った社員が生き生きと働ける環境を作るために、エグジットインタビューを単なる手続きではなく、戦略的な人事施策として活用していきましょう。まずは、形式的な面談を見直し、本音を引き出すための環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。

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