最近よく耳にする言葉「ウェルビーイング(Well-Being)」。精神的、身体的、そして社会的に心身ともに健全な状態を指しますが、コロナ禍での働き方の変化により、この状態が損なわれる人も出てきています。
2019年から進められている経済産業省の人材版伊藤レポート伊藤レポートでは、「人件費はコストであるいう考え方から、人への投資がこれからの企業の成長にとって不可欠だ」との提案がなされています。
加えて、諸外国ではメンタルヘルスへの取り組みという視点で企業を評価する基準が発表されており、日本だけでなく、世界でもウェルビーイングに対する関心が高まっている状況です。
そのような市場背景がある中、2019年4月の「ラフールサーベイ」提供開始から約4年が経過し、導入企業は約1,500社、20万人以上の方が利用していただいており、活用方法や導入成果も幅広いものとなっています。
表彰という形を通じて、『ラフールサーベイ」を積極的に活用している企業に焦点を当てることで、より多くの利用企業に認知を拡大し更なる活用を促すこと、そして組織サーベイを通じた組織改善の可能性を広く示すことを目的とし、本アワードの開催に至りました。なお、利用企業を表彰することは、サービス提供開始以来、今回が初めての取り組みです。
2023年2月21日に開催したラフール主催のイベント『Well-Being Workers Awards 2023』にて、表彰式と受賞企業による活用事例ピッチが行われました。本稿ではその模様をお伝えします。
第一回「Well-Being Workers Awards 2023」の受賞企業のうち3社より、『ラフールサーベイ』を活用した取り組みを紹介するピッチです。サーベイで高スコアを出した企業様による、リアルな事例をお伝えします。
1:株式会社ジーエスコンサルティング
河野:
ジーエスコンサルティング河野と申します。私たちは名古屋市に本社を構える採用支援企業です。採用システムの販売、Indeedの広告を中心とした採用支援をしています。以前は、毎日顔を見て声掛けをしながら状態を把握できていましたが、コロナ禍でリモートワークになったことで業務以外の会話が全くなくなってしまいました。社員一人ひとりをどう活躍させるか、どう定着させるか悩んでいた時に、お客様から『ラフールサーベイ』を教えていただき、すぐに導入を決めました。
早速『ラフールサーベイ』を活用し、組織状態を数値化したところ、作業負荷の点数が非常に悪いことに気づきました。実はその頃、急激にお客様が増えた影響で、作業量が膨大になっていました。しかし私自身はフロントでお客様向けにコンサルティングを行なっていた関係で、バックオフィスの苦労が分からない状態だったのです。そこで数値化し作業負荷という最も低い数値から改善するため、RT(次世代ロボット技術)化を進めることとなりました。その後、26体のロボットを導入することで、残業が減ったり有給を取りやすくなったりと、改善が進みました。
ディープサーベイの結果から、やはり1on1ミーティングが必要だということで、オンラインですが一人45分の面談を行うことにしました。仕事の悩みに限らず、家庭の悩みや体調のことなどにもフォーカスして話をしています。
フィジカルは、残業が減っているから大丈夫かと思っていたのですが、出勤時間を含めた勤怠を見るとあまりに仕事に使っている時間が長いと分かりました。マニュアルを動画にしたり、データ化したりして、新人教育も出勤しなくてもできるように工夫しました。
エンゲージメントについては、何のために仕事をするんだというところをしっかり伝えないといけないと感じたので、理念、ビジョン、創業の目的などをしっかりと伝え、仕事の意味を理解してもらえるよう取り組みました。
今まで私自身、経営の指標として置いていたのは、PLやBSでした。それに新たな経営の指標として『ラフールサーベイ」が追加されました。お金が儲かっても、働いている人が不幸な状態では長続きしないということで、スコア80以上を目指して取り組んでいます。
もう一点、取り組んでいることとして、メンタル組織図があります。今まではチームごとに技術的なサポートができる人を付けて組織図を作ってきましたが、実際20代の女性が40代の男性に相談するのは、内容によっては難しいこともあります。そこで、メンタルサポートのための組織図を新たに作る取り組みを始めています。
加藤:
当社は志が高く明るい人が多いので、みんなで協力して楽しく働ける雰囲気があります。ただ、例えば「福利厚生が少ないかも」と思ったとしても、果たして一従業員が代表に直接言えるでしょうか。しかし、『ラフールサーベイ』の数値で出てくれば自然と分かってもらえます。今回社長が「うちは福利厚生が少ないらしい」と『ラフールサーベイ』の結果を自ら開示。そのきっかけが『ラフールサーベイ』の数値で出てきたものだとすれば、これは大きいと思います。その流れで、みんなで欲しいものを言い合うなど、良い機会を持つことができました。
『ラフールサーベイ』では、アンケートの最後に肩こりや腰痛対策をケアするのセルフケア動画がオススメとして出てきます。一人ではなかなか続けられないところですが、「12時になったらストレッチをやる」と決めて、チームのメンバーを巻き込んで楽しく取り組んでいます。
伊藤:
仕事を楽しくする担当をしている、伊藤です。実際『ラフールサーベイ』を導入した当初は今以上に業務量が多く、本当に大変でした。『ラフールサーベイ』で組織状態を視える化したところ、代表もより実感として捉えやすくなったようです。積極的にフルリモート採用を行う形にかじを切ることができました。
当社はもともと従業員同士仲がよいのですが、リモートワークですと雑談が減ったり、お昼休みを一緒に過ごせなかったりします。そこで、Zoomで朝礼や夕礼を実施して、その時に近況報告や雑談をすることで、状況共有やサポートしていくことにしました。今後もこういった取り組みを大事にしていきたいと思います。
河野:
私も長年、肌感覚でマネジメントをしてきましたが、それでは見えにくいこともあります。『ラフールサーベイ』の数字を指標に、社内のインセンティブを作って、みんながそれを楽しみながら、よりよい会社になるよう取り組んでいきたいと思います。オンライン中心でも、リアルに負けないぐらい深い関係性を築いていきます。そして24年度の受賞もまた全員で狙っていきたいと思います。
2:イグニション・ポイント株式会社
宮崎:
イグニション・ポイント株式会社の取り組みについてお話をさせていただきます。イグニション・ポイントはコンサルティング事業、イノベーション事業、インベストメント事業の3軸で事業を展開し、今まさに急拡大をしているところです。従業員数も3年前に比べると3倍4倍となり、さらに1000人規模の会社を目指しています。
幸いなことにエンゲージメント指数も下がらず、むしろ会社の成長に合わせて上がり続けており、この間さまざまな外部評価を頂いてきました。エンゲージメントで評価される原点は、「ゆたかな人生のきっかけを」という理念にあると思っております。事業を通して利用者の方のゆたかさのきっかけ作りをしていきたいという思いもありますし、何より一緒に働く従業員の皆さんがイグニション・ポイントという環境を通して、ゆたかな人生を作れるような会社でありたいという思いが込められています。
当社が大事にしている5つのポイントは、理念への共感、仕事内容、報酬、一緒に働く仲間、組織を先導するリーダー。この辺りが実際にエンゲージメントを高めていく上でも、とても大事な要素だと考えています。ただ頑張ろうということだけではなく、何らかの数値的な指標を置いて経過観察していかないと、本当に改善をしているかどうか分かりません。そのために3年前に『ラフールサーベイ』を導入しました。
現在ショートサーベイを毎月、3カ月に1回ディープサーベイを実施しています。回答率は95%以上を続けています。「この結果が続くと退職リスクが高い」など、特に注意すべき項目も、この間の蓄積の中で見えてきました。危険信号がともった従業員に対しては、各上長と相談しながらフォローを行っています。
当社は『ラフールサーベイ』の中でもエンゲージメント指数を、売上や利益と並ぶ超重要指標と位置づけてウォッチしています。マネージャー以上の評価項目、人事評価の項目にもエンゲージメント指数を入れ、意識せざるを得ない状況を作っているのです。エンゲージメント指数の経過を見ながら、実際に事業責任者を交代させたこともあるほどです。
数値を取った後は、きめ細かな従業員へのフォローをしていく必要があります。我々の会社ではキャリアの相談もできる心理的安全な場としての1on1をとても重視しており、これを徹底的に行うところが特長といえます。まずパフォーマーズマネージャーというのが、全社員に一人ずつ付きます。役員であっても同じです。
1on1の実施は2週間に1回、必ず行うよう義務付けています。スケジュールの中に登録されているかどうかを人事側でモニタリングし、必ず入れてもらう。その中で、ラフール結果からフォローが必要な方については、事業責任者に結果を共有し、この1on1の中でフォローするようにしています。
ちなみに2週間に1回としているのには理由があります。ある時点で不満を抱えている従業員がいたとして、次の1on1が1カ月後ですと、それまでに転職先を決めてしまっている可能性があるのです。こうなってしまったら、もう気持ちは次の会社に移ってしまい、そこから引き戻すのは難しい。ただ、2週間に1回であれば、まだそこまで進んでいないため、会社に引き戻すことが可能だと考えられるのです。この辺りの徹底も、対外的な評価につながっている一つの要因かと思われます。
最後に、ラフールさんのほうから「組織改善とはどういうものですか」という問いを頂いていたので、それについてお話ししたいと思います。我々は組織改善をとても重要視しているし、やり続けていますが、組織改善は目的ではなく、あくまで手段。大きな目的は理念の実現であり、ここをぶらさないことが大切です。そのために何をすればよいかを日々考えていますし、今後もそういった理念につながる改善活動をしていきたいと思っています。
3:株式会社ウィルゲート
北林:
ウィルゲート執行役員の北林です。今回、組織改善のプロセスの部分を評価頂けたことを大変喜ばしく思っています。この1年試行錯誤しながらトライしてきたので、しくじり先生的なお話も含めてさせていただきます。
当社は「ベンチャーの可能性を広げ、あらゆる挑戦を支援する」というビジョンを掲げ、Webマーケ領域を中心に、ベンチャー企業を総合的に支援していく会社です。エンジニアも社内におり、平均年齢は30歳前後です。組織改善というプロセスにおいてどういった思想でどう運用したかを中心にお話しいたします。
『ラフールサーベイ』導入は2021年の冬です。同年夏ごろからは、コロナ禍に伴い、リモートメインに切り替えていく前提で体制構築や制度導入をしてきました。組織的には大きなターニングポイントだったと記憶しています。そうなると、当然社員それぞれのセルフマネジメントが大事になってきますし、役職者もこれまでとは違ったコミュニケーションの取り方、メッセージングの仕方が必要になってきます。しかし、突貫でのリモート移行でしたし、私も含めてそういったハウツーがありませんでした。
また、事業サービスが広がり、いろいろな職種のメンバーが入ってくる中、コンディションの把握が難しくなってきたことを覚えています。当時の労務担当と、Googleフォームでパルスサーベイを作ったものの、思うように運用できず、だんだんと形骸化していった苦い経験があります。
実際コロナ前には、年間2名だったメンタル不調者が、コロナ後1年では7名と、増えてしまいました。これはさすがにまずい。テレワークメインならば、もっと社員のコンディション把握や分析に投資しなければいけないと思いました。そして、次のことを実現したいと考えました。
① タイムリーに社員のコンディションの把握をし、配置や制度設計に活かしていきたい。
② マネジメントを担う役職者に指針となるものを提供したい。
③ 社員一人一人のセルフマネジメント力を高めたい。
『ラフールサーベイ』はストレスマネジメントに強みがあり、セルフマネジメントに力を入れていることから、当社の意向にマッチしていました。また、権限管理やデータ蓄積に柔軟に対応できることも重要と考え、ラフールさんには、ここ1年でかなりいろいろな要望を出させていただきました。
実際の運用についてですが、ショートサーベイを毎月、ディープサーベイを半年に1回実施。全社員回答必須としています。当社の特徴として、ショートサーベイの結果は各マネージャーまで、担当のメンバーの結果は全て公開しています。各マネージャーや社員一人ひとりが自走して、セルフマネジメントも含めてマネジメントできるようになってほしいからです。
そして、回答しっ放しにならないように、回答後のフローをしっかり整えました。『ラフールサーベイ』は個人に対してすぐに一次回答のフィードバックが返ってきますので、その後人事部門が分析し、個別対応していくような動きを取っています。
それを軌道に乗せるためにどんな工夫をしているかをお話ししましょう。
1つ目は「巻込みが命」ということです。形骸化したり、答えるのがしんどくなったりしないためには、草の根の努力が必要です。「大事なのはサーベイ結果の良しあしではない。サーベイスコアが個人の評価に影響をすることはないんだ」というメッセージをしっかり会社のほうで発信する。そして実態を伴わせることがとても大事です。裏では「なんでこんな低くつけてるんだ」と言ってしまうことが絶対にないよう、人事側、経営者側からメッセージングするということです。結果へのアンサーも大事です。「こう感じた、こうしようと思う」というのをまずは経営者や人事側として発信すること。ここは地道な文化づくりが必要です。
2つ目は、事後運用を前提として、しっかりとリソース確保すること。これは人事部門の方にお伝えしたいことです。当社の場合、マーケ部門の優秀なアナリストを人事部門に引っ張ってきたことで、劇的に生産性が改善しました。
3つ目は、対処療法ではなく、原因療法を目指すということです。そのために、記名できるサーベイで、退職希望と異動希望をとり、それから会社への意見をフリーコメントで回収しています。
また、「こういう傾向があると離職リスク、休職リスクが高い」というものを独自で作って対応しています。あまりやりすぎると、本音で答えづらくなるため、本当に嫌な人には必要以上にアプローチしないことも大切でしょう。一方で、こういった仕組みが組織のタイムリーな把握につながってきている感覚もありますし、社員側にもポジティブに捉えてくれている人が多いようです。その辺りが地道にフローを整えて運用してきてよ良かったと感じている部分です。
最後に「組織改善とは?」というテーマを頂いたので、私の考えをお話しします。組織は刻一刻と状況が変わる生もの、ゴールがない旅ともいえます。その中で当社が掲げる組織改善の理想状態は、経営者や人事がやっていくというよりも、一人ひとりの社員が自分で改善していけるようになること。その雰囲気作りが肝要なのです。当社も道半ばではありますが、一生懸命やっていくと、社員からもどんどん提案が出てきます。そんな環境を今後も作っていきたいなと思っています。
この場にお集まりの企業様や、ラフール社の皆さまが、働き方や働く環境という切り口で全体を盛り上げて、どんどん挑戦が広がっていく社会になるといいなと思っています。引き続き皆さんよろしくお願いいたします。
『ラフールサーベイ』をもとに組織改善における継続的なPDCA運用を実施中の企業様からお話を伺いました。きっと明日からの皆さまのミッション、業務にお役にたてることと思います。皆さまありがとうございました。
受賞企業一覧はこちらよりご覧ください。
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