【イベントレポート】ラフールサーベイ全ユーザーデータを徹底解剖!

『ラフールサーベイ』のデータでみえた男女差に着目した組織課題解決のヒントとは

最近よく耳にする言葉「ウェルビーイング(Well-Being)」。精神的、身体的、そして社会的に心身ともに健全な状態を指しますが、コロナ禍での働き方の変化により、この状態が損なわれる人も出てきています。

2019年から進められている経済産業省の人材版伊藤レポート伊藤レポートでは、「人件費はコストであるいう考え方から、人への投資がこれからの企業の成長にとって不可欠だ」との提案がなされています。

加えて、諸外国ではメンタルヘルスへの取り組みという視点で企業を評価する基準が発表されており、日本だけでなく、世界でもウェルビーイングに対する関心が高まっている状況です。

では、ウェルビーイングをどのように経営に活かせば良いのか、それらのデータを活用し、どう事業に活かせば良いのか。この点について、立正大学心理学部教授 永井智氏、株式会社ラフール執行役員眞木麻美 が、組織サーベイ「ラフールサーベイ」における約7,000万以上の回答データから徹底解剖、2023年2月21日に開催したラフール主催のイベント『Well-Being Workers Awards 2023』でトークセッションを行いました。本稿ではその模様をお伝えします。

眞木 麻美
株式会社ラフール
執行役員
プロダクトマーケティング事業部 部長

新卒で広告代理店経験後、2012年にリクルートグループの人材領域カンパニーに入社。営業、キャリアアドバイザーの他、業務企画や新規事業開発など幅広く経験。特に社内における業績悪化時の業務設計や従業員ケアなどで多くの部署を経験。2019年10月に株式会社ラフールにジョイン。インサイドセールスチームの立ち上げに従事。現在はセールス・マーケ・CSの属するプロダクトマーケティング事業部の部長をやりながら顧客へのアドバイザーとしても活動。

眞木:
このセッションでは、『ラフールサーベイ』を共同開発していただいた立正大学心理学部永井先生をお迎えし、全ユーザーの回答データの最新分析結果をお伝えしていきます。

はじめに『ラフールサーベイ』のご紹介をいたします。『ラフールサーベイ』は「組織と個人の両面からウェルビーイング経営を実現するツール」として、当社が提供しているサービスです。組織の課題解決のためのPDCAをしっかり回しつつ、従業員の方のセルフマネジメント力も上げられる、それが『ラフールサーベイ』の大きな特長となっています。
『ラフールサーベイ』には、手軽に実施できるショートサーベイと、ストレスチェックにも対応しているディープサーベイがあります。ディープサーベイは154項目の設問により、モチベーション、エンゲージメント、メンタル、フィジカルをはじめとした人材データを深掘りしたもので、今回の分析はこれらのデータを用いております。それでは永井先生、お願いいたします。

永井 智
立正大学心理学部教授
臨床心理士/公認心理士

立正大学心理学部教授。筑波大学大学院修了。博士(心理学)、臨床心理士、公認心理士。 大学で臨床心理学の教佃を執る傍ら、精神科クリニックにて、心理カウンセリングや 勤労者へのリワークプログラムを行っている。 現在は、株式会社ラフールと立正大学が行う共同研究を通して、ラフールサーベイを用いた従業員の健康・エンゲージメント等について研究を行っている。

永井:
私の主な研究テーマは、「従業員の方々の健康」と「助け合いの心理学」です。よりよい働き方につながる要因は何かということをテーマに、ラフールさんと一緒に研究を進めてきました。

データを取りためて可視化してみると、経験的に分かっているようなことが明確になったり、意外な発見があったりします。例えば次のようなことです。

緊急事態宣言が出る前後で『ラフールサーベイ』の回答がどう変化したかを調べてみました。一つ面白かったのは、宣言が出た後には、人間関係が悪くなりストレスも増えましたが、ずっとテレワークをしていた方々に限っては、逆にストレスが減る、あるいはコミュニケーションが取りやすくなるということが起こりました。こういった働き方も、大事なのかもしれないということが見えてきたわけです。 もう一つ年齢や価値観別に見たものをご紹介しましょう。

社会に積極的に参加しようとしている人たちは状態が良好で、悩みを見つめてしまう方々は職場の中ではストレスを抱える傾向が見えてきました。また、年齢によって職場でのストレスや組織との関係は変わってくると思いますが、年齢よりも価値観による差のほうが大きいという結果が出ました。若いから、中堅だからというよりも、どういった価値観を持って仕事に向き合っているかのほうが、会社の中での動きとの関連が深いのかもしれません。

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職業意識における男女差について

さて、男女共同参画がいわれるようになって久しいですが、日本はいまだジェンダーギャップ指数も良くない状況が続いています。本日は男女共同参画に関係する項目を中心にしながら、主に事業所を単位とするストレスや職業意識の男女差等についてご報告をさせていただきたいと思います。分析に用いたのは2021年から2年の2月の間に実施する『ラフールサーベイ』に回答された69717人のデータで、事業所の数は575です。なお、男性か女性かは、自己申告に基づいております。

まず、ストレスチェックの指標をピックアップし、男女差の有無を調べてみました。「周りの人たちからどれぐらいサポートを受けていますか」という設問では、女性のほうが多くサポートを受けている結果となりました。一方で「活気を持って働けている」など、働きがいや職業適性については男性のほうが高くなっていました。あまりステレオタイプ的に解釈するのは良くないですが、まだまだ男性のほうが女性よりも仕事に対するやりがいを得やすい状況にあるといえます。

「家庭での満足感や職場での満足感はどうですか」と聞くと、それほど男女差はありません。気になるのは、疲れたとか不安、イライラがあるなど、職場環境や対人関係のストレスに関わる項目について、女性のほうが高くなっていることです。いろいろ要因はあるでしょうけれども、職場での働きやすさ、生き生きと働けているかどうかについては、どうも男女差があるようです。 

次に男女共同参画に関わる項目で比較してみますと、多くの項目で男性のほうが点数が高く出ました。例えば「失敗しても挽回するチャンスがある」、「自分の仕事には十分裁量が与えられている」、「職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる」といった、自律性が尊重されて、前向きに仕事に取り組んで成長していくような項目は、軒並み男性のほうが高くなっています。これは、働きやすさに差があることを伺わせる結果かと思います。女性にとっては、自分自身が尊重され主体的にキャリア形成ができていると感じにくいのだと思われます。

一方、「上司からふさわしい評価を受けている」、「仕事に見合う給料やボーナスをもらっている」というところは、かろうじて差があまり出ませんでした。ただ40代以降で少し差が出てくるのが気になります。若い人たちに不満がなさそうだから大丈夫と楽観するのではなく、継続的に不満を持たずに働けるにはどうしたらよいか、考える必要があるかもしれません。

「いろいろな立場の人が尊重されている」という項目についても、40代以降から女性は少々下がり気味になっており、男性はむしろ少し上向きです。中堅以降の時期で一部の男女差が顕在化し、女性が評価されたり尊重されたり適切な給与を得ることができていないと感じているようです。40代以降の女性の方々が、実はどこかで肩身の狭い思いをしていたりしないだろうか。そんな目配りが大事だと伺える、我々としても興味深い結果として受け取っております。

たぶん多くの皆さんは、一般的に女性のほうが管理職になる者が少ないから男女差が出ているのではないかと思われるでしょう。私もそう思っていました。しかし今回のデータでは、管理職の比率が男女ともに20%あまりと、ほぼ同程度だったのです。それにもかかわらず男女共同参画やストレスについての差が出てきています。

ポジションが関連しているのかも気になるところです。そこで、「管理職」「正社員」「パートや派遣」という3つの属性について、立場と性別で分けた時に差が見られるか調べてみました。そうすると、「失敗しても挽回のチャンスがある」という項目について「そう思う」という人が少なかったのは、女性の正社員の方々という結果が出たのです。非正規のほうが評価がネガティブかと思っていましたが、むしろ正社員のほうが低いという、我々としても意外な結果でした。そして男性のほうは、立場の違いによる差は一切ないということです。

実際にそういった要因が、仕事の満足感や就労継続意欲にどれくらい影響しているのかも分析してみたところ、身分や性別による差が若干出てきました。常勤でない方々は、失敗しても挽回するチャンスがあったり、十分裁量が与えられたり、自律的に働く環境を用意してもらえると、仕事の満足感が上がりました。これはなかなか面白い結果です。「いろいろな立場の人が尊重されている」、「性別関係なく活躍できる」といった項目については、直接仕事の満足感に結びつくことはなさそうでした。派遣だから非正規だからと線を引くのではなく、常勤以外の方々もしっかり活躍できるよう業務や権限が与えられることで、仕事の満足感が得られることが示されたといえるでしょう。

一方、正社員では、「尊重され、大事にされている感覚も、満足感につながることがある」という結果になりました。こういった項目は女性のほうが低くなりがちですので、注意する必要があります。

次に管理職の方々はどうかというと、男女差が出ました。確かに管理職ですので、「十分裁量が与えられている」ことが男女とも仕事の満足感につながりやすいのは納得できます。しかし他の項目、「いろいろな人が尊重されているという」、「失敗しても挽回するチャンスがある」、「性別関係なく活躍できる」といった項目は、女性の管理職では仕事の満足感につながるのに、男性管理職はあまり気にしていない。

逆に言うと、男性管理職はこういったことにこだわらずとも仕事の満足感を得られるということです。これは意識の差にもつながってくると思います。なぜなら、自分の満足感に関係しないことを重視しなくなる可能性があるからです。女性の場合は、「やはりこういうことがないと仕事は楽しくない、満足感は得にくい」という意識がある。そこで何かギャップが生まれる可能性があるといえます。

また、女性の管理職の方々は「性別関係なく活躍できる」という思いが「今後も働き続けたい」という意識につながるという結果が出ました。これは注目すべきです。男性ではこういった関連性は全くありません。「性別関係なく活躍できる」というところで意識のギャップがあって、女性が活躍できる感覚が弱まってしまうと、「この職場を離れてもいいかな」と感じてしまうおそれがあります。結構気をつけたいところではないかと思います。

自己決定理論、心理的安全性、認知バイアスへの対応を

最後に 心理学的なところから話をしましょう。Deci&Dyanの自己決定理論という有名な理論があります。そこでは仕事自体の面白さや、やりがいをモチベーションとして働ける人たちには、大切なものが3つあるといわれています。1つ目は「自律性」。主体的に働くことができるということです。これは「十分裁量が与えられている」といったところにリンクします。2つ目は「被受容感」。みんなに受け入れられているという感覚です。これは「いろいろな立場の人が尊重されている」、「性別関係なく活躍できる」といった項目につながっています。3つ目は「有能感」。成果・達成ができていることが次なるモチベーションにつながるといわれています。

先ほど出てきた項目について、特定の人たちが低くなることは、最終的に仕事のモチベーションに影響します。いかに高めていくかを考えることが大切です。業務や指示の仕方を見直し配慮することが、良いパフォーマンスにつながっていくのだろうと思われます。

最近、心理的安全性ということがよくいわれます。非難されたり排除されたりする恐れがなく、自分の意見などを安心して発言できる環境が大事だということです。「失敗しても挽回するチャンスがある」という項目がこれに関連するでしょう。心理的安全性が低いと、自発性の抑制や失敗を回避や隠ぺいにつながるリスクがあり、組織の活性化を妨げてしまいます。隠すのではなく、問題を明らかにし、みんなで対応するような環境を作っていくことが大事だろうといわれています。心理的安全性の高い風土をしっかりと作っていかないといけないということです。

皆さんの中には「すでに十分配慮している」と考える方もいらっしゃるでしょう。特に男性に多いのではないでしょうか。一方で女性は、まだ全然そんなことないと思っていたりする。そこのギャップをいかに埋めていくかが大事です。自分たちの職場はすでに平等公平であると過信せず、みんなで対話し、メンバーの声を丁寧に聞きながら環境改善に努めることが重要だと思います。

眞木:
大変興味深く拝聴いたしました。やはりお互いに、相手がどういう認識でいるのか、どういう感情でいるのか気にかけつつ、気持ちのよいコミュニケーションを考えながら仕事をするのがよいのだろうと、改めて自分の胸にも手を当てながら考えておりました。

先生は、『ラフールサーベイ』で、今後どのような分析を進めていかれますか。

永井:
一つは業種による違いです。ストレスの感じ方が結構違ったりする。今日お話しさせていただいたものが、仕事によってどう変わってくるのかも見ていけたらと思っております。

眞木:
ぜひまたそのお話も伺いできればと思います。本日はありがとうございました。

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