仕事において時間は非常に重要なものです。実際に、有名な企業や優秀な人たちが「時間は有限である」というような趣旨の言葉を発しているように、時間をコントロールすることは仕事において非常に重要です。
今回は、時間の管理方法(タイムマネージメント)について基礎的な部分を押さえつつ、タイムマネジメントを行うときの具体的な方法もご紹介します。ぜひ参考にしてみて下さい。
タイムマネジメントとは?
はじめに、ビジネスシーンでのタイムマネジメントの意味と仕事で必要な理由を理解しましょう。
タイムマネジメントの定義
ビジネスシーンでは、時間の使い方を改善することで自分の仕事のやり方・進め方を管理できるようになり、生産性アップを図ることを意味します。
タイムマネジメントと聞くと、スケジュール管理を思い浮かべる方は多いかもしれません。たとえば、「6:00に起きる」や「19:00にジムに行く」などがあります。
一方、ビジネスシーンのタイムマネジメントは、少し違います。
ビジネスシーンのタイムマネジメントは、時間管理にとどまりません。限られた時間で結果を出すために、効率的に仕事ができるよう、業務の進め方・やり方の見直しやコントロールまで求めるからです。
たとえば、お昼休みに入る前にお客様に連絡しなければならないとします。メールを送るという行為だけでも、お客様が欲する情報の整理、有益な情報を提供するためのリサーチ、文面をつくるなど、複数の業務をしています。
「1つの業務を終えるのにどのような業務が必要?」「一つひとつの業務は大体何分かかる?」などを考え、短時間で終えるための手順を決められるようになるのに、タイムマネジメントが活かせます。
タイムマネジメントの必要性
時間を上手に使って成果を出すのに、タイムマネジメントの理解は欠かせません。タイムマネジメントの重要性を理解することで、効果的な取り組みができ、結果につながるからです。
結果につながる仕事をするために欠かせないものとして自分の仕事を自分でコントロールすることが求められます。自分の仕事をコントロールできない、つまり、タイムマネジメントを意識せずに働けば、無駄な業務が発生する、非効率的な工程・仕組みが改善されないまま長時間労働が常態化するなどに陥ります。
対して、自分の仕事をコントロールできる、つまり、タイムマネジメントを意識できれば、効率的に業務ができる仕組みをつくれ、不要な残業をしなくても結果を出せます。
昨今、働き方改革に伴い、生産性アップを望まれるようになっていることも、タイムマネジメントに注目が集まる理由です。
タイムマネジメントのメリット
タイムマネジメントで得られるメリットを深掘りしていきます。
タイムマネジメントですぐに実感できることは、仕事の効率が上がり、多くのタスクをこなせるようになることです。
業務の処理能力が上がることで、以下のようなことも期待できます。
- 仕事の質を高めたりできることを増やすための時間をつくれる
- 仕事とプライベートを両立できる
- コストカット
業務効率化の実現で、自由に使える時間が増えます。空いた時間に仕事で必要なスキルを身につける、資格取得の学習をするなどで、今の仕事に携わりながらキャリアアップできる可能性が高まるでしょう。
他にも、空いた時間は、休養や趣味の時間にも充てられます。楽しみがあれば、仕事へのモチベーションが上がります。また、きちんと休むことで、疲れが取れるので、集中して仕事に取り組めます。集中力もやる気も維持して仕事できる従業員が増えると、生産力の向上を期待できます。
このように、タイムマネジメントは、従業員と企業がより良くなるための時間を生み出すものと言えるでしょう。
タイムマネジメントの具体的な手順
順序を立てて進めると、効果的なタイムマネジメントになるでしょう。タイムマネジメントは、以下の手順で進めます。
- やることの洗い出し
- 優先順位をつける
- タスクの見える化と実行
段階ごとにポイントを詳しく解説します。
やることを洗い出す
業務を効率化するときに大切なのは、以下のような業務に関することを洗い出します。
・どのような業務の状態(ステータス)
・どれくらいの時間をかけているか把握すること
・時間があればやりたいこと
業務を洗い出すときに活用できる手段が「ロジックツリー」や「ブレインストーミング(ブレスト)」です。
ロジックツリーとは、課題をトップに置き、問題の要素を樹形図で展開することで、原因を分析しながら解決策を実行するためのフレームワークです。1つの課題を目に見える形で細かく把握できる点で、業務の見える化に活かせます。
たとえば、営業のタスク管理で課題があるならなら、営業で必要なタスクを洗い出します。たとえば、自社製品のインプット・プレゼン資料の作成・アポイントをとるなどに分けられます。
もう一つの方法であるブレストは、複数人で集まってテーマに対してアイデアを出し合う方法です。他の人と一緒に自分たちの業務の課題への解決策を洗い出すことで、1人では思い浮かばないことに気付けます。また、同じ意見が出れば、その業務はチームとしてやるべき業務を再確認できたことになるので、チェックという意味でも効果があります。
このフェーズの注意点として、業務の洗い出しの段階では、緊急性や優先度は考えないようにしましょう。やることを洗い出しながら優先順位を考えると、タイムマネジメントの最初の目的に集中できず、見落としやケアレスミスをしてしまう懸念があります。
優先順位を考える段階は後にあるので、まずは洗い出しに専念してください。
優先順位をつける
やることを整理できたら、業務の優先順位を決めます。重要度・緊急度ごとに業務を振り分けます。その際に使えるのが「アイゼンハワーマトリックス」です。
アイゼンハワーマトリックスは、タスクや時間管理に役立つフレームワークで、アメリカ大統領であったアイゼンハワーが活用していたことから、名付けられました。
アイゼンハワーマトリックスを使うことで、下記4つの領域に業務を分類できます。
- 第1領域:重要度も緊急度も高い業務
- 第2領域:重要度は高いが緊急ではない業務
- 第3領域:緊急だが重要度は低い業務
- 第4領域:重要度も緊急度も低い業務
たとえば、納期が近いプロジェクトを進めることも人材育成も、重要な仕事です。
しかし、緊急度の違いから、それぞれのタスクは異なる領域に当てはまります。
まず、納期が近い案件は急いで処理しなければならないので、第1領域です。一方、人材育成は時間をかけて行うことなので、第2領域に振り分けます。
重要度の低い仕事は、「緊急性の高いものは他の人に頼めないか?」「緊急でもないものは辞めれないか?」などと検討してみてください。
タスクの「見える化」をして実行する
業務の優先順位が分かったら、目標・締切を決めて行動に移しましょう。
業務ごとに具体的な目標・期限を設定するときは、「SMARTの法則」「HIROEN」などのテクニックが役立ちます。
「SMARTの法則」は、1981年にジョージ・T・ドランが発表した方法です。「SMART」は、目標達成に重要な5つの要素の頭文字を合わせたものです。
- S:Specific「具体性・明確性」…具体的な目標か
- M:Measurable「計量性」…目標の達成度を測定できるか
- A:Assignable「割当設定」…権限・役職などが割り当てられているか
- R:Realistic「実現可能性」…達成できる目標か
- T:Time-related「期限設定」…期限が設けられているか
上記に着目して業務を分析すると、目標達成に必要なことが具体的に見えてきます。
たとえば、「営業成績を上げる」という目標だけでは、「いつまでに?」「いつと比較して?」「どれくらいアップさせる?」などが分からず、のちに振り返ったときに達成できたのかを正しく判断できません。
一方、「同月末日比較で前年より5社は多くの企業に自社製品を導入してもらう」という目標なら、今月の終わりに前年同月より契約企業を5社増やせたか否かを判断できます。
ただし、業務のゴールを決める際、全ての要素を満たしていなくても問題ありません。目標・期限の設定に悩んだら、効率化に影響しなそうな要素に絞った上で検討してみてください。
「SMARTの法則」で業務の目標や締切を決めたら、業務の進め方・やり方を管理しやすくするため、「HIROEN」を使います。
「HIROEN」は、タスクをこなすための行動を細分化し、業務効率化のためにやるべきことの抜け漏れを防ぐのに使えるフレームワークです。6つの頭文字から業務を考え、他にやるべき業務はないか確かめてから実践しましょう。
- H:Hear「聞く」…聞くことはないか
- I:Inform「知らせる・伝える」…伝えることはないか
- R:Request「依頼する」…他の人に頼むことはないか
- O:Operate「作業する」…自分がやることはないか
- E:Examine「調査する」…調査・検討することはないか
- N:Negotiate「交渉する」…交渉が必要なことはないか
たとえば、契約してもらう企業を増やすのに、営業担当者の増員をすることにしたとします。
増員は人件費を増えることも意味します。そして、入社した人の指導も必要なので、「教育できる人はいるか?人件費はいくらなのか?」「年収はいくらまでなら出せるか?」などを聞き、人材育成の時間調整や年収の交渉が必要と考えられます。
このように、「HIROEN」や「SMARTの法則」は1つの業務の目標達成に必要になりそうな業務の洗い出しに便利です。
タイムマネジメントの効果をより上げる方法はタスク終了時に振り返りの時間を設定する
「計画どおりに進んでいるか?」、「時間配分は適切か?」などの振り返りはタイムマネジメントの効果を高めます。
振り返りの時間(以下、リフレクション)は、できたこと・できなかったことを洗い出し、改善策を考えます。
振り替る際に便利なツールが、「KPT法」「KDA法」「YWT法」などのフレームワークです。
KPT法は、下記に着目して業務を振り返ります。
- K:Keep…すでにできていて続けること
- P:Problem…課題
- T:Try…改善策を考える・新しいやり方を実行する
KDA法は、下記のことを考えます。
- K:Keep…うまくできていて続けること
- D:Discard…やめること
- A:Add…できた・できなかったなどを踏まえて新たに始めること
YWT法は、「やったこと」「分かったこと」「次にやること」の頭文字をとった、日本独自のフレームワークです。実践したこと・今後やること併せて、試してみて何を感じたかも振り返ります。
リフレクションは、下記のように進めます。
- 振り返る事例を取り上げる
- 事例を段階ごとに分ける
- 「できたこと」「できなかったこと」を考える
- より良い方法を検討する
たとえば、「コーポレートサイトのアクセス数を増やす」という目標を振り返るとします。アクセスが増えるよう「サイト内のブログの更新頻度を増やす」「SNSでシェアしたい情報を発信する」「更新したら会社のSNSでシェアする」といった具体的な業務の内容や工程が見えてくるかと思います。
先に紹介したフレームワークを使い、ひとつひとつの業務のできた・できなかったことを振り返りながら、改善策を考えてみてください。
まとめ
タイムマネジメントは、仕事の時間の使い方を見直して生産性アップするのに大切です。仕事が効率的にできると、プライベートとの両立やキャリアアップなどに役立ちます。
効果的に業務と時間を管理するには、スケジュールを立てるだけではなく、しなければならない業務の重要度・優先度を見極め、目標・期限の設定、実行にあたり相談が必要な人や関連業務の有無などまで考えなくてはなりません。
そして、「目標やノルマに無理はないか?」「さらに生産力を上げるのにできることはないか?」などを振り返る時間も必要です。
本記事で紹介したやり方を参考に、タイムマネジメントを実践してみてください。