コロナウイルス感染症対策によりテレワークを実施している企業が増えています。
しかし、「メール作成の手間が増えた」「細かいニュアンスが伝わりにくい」など、オンラインでのコミュニケーションにストレスを感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、円滑なオンラインコミュニケーションを行うための課題と対策、成功事例を解説します。テレワークの本格的な導入を考えているマネジメント層の方もぜひお役立てください。
コロナ渦のテレワーク普及
総務省の「令和2年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入した企業割合は47.5%と、前年に比べて2倍以上も上昇しています。
参考:令和2年通信利用動向調査
テレワークの導入によりメールや電話でのやりとりが主流になることで、コミュニケーションにストレスや不安を感じる人も増加傾向にあります。2021年1月に実施されたHR総研の「社内コミュニケーションに関するアンケート2021結果報告」では、コロナ禍での社内コミュニケーション状況の変化について「悪化している」と答えた割合は、従業員1,001名以上の大企業では46%、301~1,000名では40%、300名以下の企業では39%と高い水準でした。
加えて、69%もの人が「コミュニケーション不足は業務の障害になる」と回答しています。テレワーク下ではコミュニケーションが取りづらく、仕事の生産性やモチベーションに悪影響を及ぼす恐れがあります。そういった事態を防ぐためにも、円滑なオンラインコミュニケーション環境は、まさにこれからの時代に必要不可欠と言えるでしょう。
参考:社内コミュニケーションに関するアンケート2021結果報告
オンラインコミュニケーションの種類
オンラインのコミュニケーションは、下記の通り大きく3つに分けられます。それぞれの特徴をよく理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。
テキストコミュニケーション
メールやチャットなど文字ベースでやり取りをする方法です。テキストが履歴として残るため、過去のやりとりをいつでも確認でき、伝達ミスを防げます。ただし口頭のコミュニケーションに比べると、文章の温度感が伝わりづらいデメリットがあります。社内でのコミュニケーションであれば、「!」や絵文字などを交えながらやりとりをすると、文章に温かみを足せるでしょう。
ボイスコミュニケーション
ボイスコミュニケーションでは、電話やSNSの通話機能を活用します。ボイスチャット機能を備えたツールもボイスコミュニケーションには便利です。文字ベースではニュアンスが伝わりにくい内容や緊急性の高い内容などはボイスコミュニケーションが役立ちます。
ビデオコミュニケーション
ビデオコミュニケーションは、ZoomやWeb会議システムなどを用いて音声や映像を使って会話をする方法です。社内ミーティング以外にも、社内セミナーや社内研修・商談にも活用できます。
オンラインコミュニケーションの課題・問題点
それでは、実際にオンラインコミュニケーションの課題、問題点にはどういったものがあるのでしょうか。
チームの状況を把握することが難しい
オフィスで働いている場合であれば、メンバーそれぞれの進捗状況をすぐに把握できました。しかし、テレワークでは同じように状況を把握することは困難です。上司・部下間のコミュニケーションが十分に取れていないことで、チーム全体のモチベーションが下がり、仕事の品質にも悪影響を及ぼします。
感情や意図、ニュアンスを伝えることが難しい
メールや電話がメインのやりとりでは、相手の表情や声のトーンがわからないため、感情や意図など、細かいニュアンスが伝わりません。自分が思った以上に相手には冷たく伝わってしまったり、すれ違いや誤解が生じるといった問題も発生しやすいでしょう。
また「部下の理解度がわからない」「部下の考えていることがわからない」といった悩みを抱える上司も多く、部下への育成の懸念にもつながっています。
オンラインコミュニケーションの課題の解決策
オンラインコミュニケーションを円滑に行うためには、どういった解決策が適切なのでしょうか。
スケジュール共有の仕組みづくり
まず全社、部署内、チーム内など、自社のスタイルに合った規模でメンバー同士のスケジュールを可視化・共有する仕組みづくりからはじめてください。
グーグルカレンダーの共有やタスク管理ツールを用いて、それぞれのスケジュールが可視化できれば、「今日は業務にゆとりがありそうだな」「商談が続いていて余裕がなさそう」といったようにメンバーの状況が瞬時に把握しやすく、コミュニケーションのハードルを下げられます。
負担にならないよう、現在使っているシステムでカバーできないか、確認しておくとよいでしょう。
定期的に業務の進捗報告の場を設ける
上司が部下の業務の進捗を知りたい時、出勤時ならオフィスで声をかけて確認できました。しかし、テレワーク下で個別に進捗状況を確認するのは非効率です。
定期的に業務報告の場を設けることで、自己申告だけに頼らない進捗確認が可能になり、さらには人事評価の材料にも活用できます。
テレワークにおけるコミュニケーションのルールづくり
ルールづくりを行う管理職側が高い意識を持っているだけでは、不十分です。
例えば「誰かが話しているときはミュートにする」「相手の声と被らないよう、あいづちは声に出さず大きくうなずく」「ネガティブな内容は通話ツールを使用する」といった、マナーレベルに落とし込んだ具体的なルールがあると、誰にとってもわかりやすく、使いやすくなるはずです。
ただし厳格すぎるルールはおすすめできません。続けやすいルールづくりを目指しましょう。
雑談などのゆるいコミュニケーションのためのツール導入
会議の前後や休憩中のちょっとした雑談が、新しい発見やアイデアにつながったという経験はありませんか。仕事とは少し離れた場所での会話は、また違った視点を得られる貴重な機会でもあります。
例えば、毎週決まった曜日の昼休憩に雑談専用のオンラインミーティングを開いたり、Discord(ディスコード)などの雑談専用ツールを使用したり、あえて雑談の時間を作るのもひとつの方法です。仕事の生産性アップにつながるだけでなく、コミュニケーション不足の解消にも役立つでしょう。
オンラインコミュニケーションを円滑にするコツ
ここから、オンラインコミュニケーションを円滑にするコツを紹介します。オンラインのやりとりが苦手という人はぜひ参考にしてください。
スタンプや絵文字を活用する
メールやチャットなど文字ベースのコミュニケーションでは、相手の表情が見えず、対面より冷たく感じられることが多くあります。スタンプや絵文字を活用すれば、文章に表情を足せるのでニュアンスが伝わりやすくなります。
ただし相手の役職や関係性に配慮が必要です。目上の人には必要以上に使用しないよう注意してください。上司が積極的にスタンプや絵文字を活用し、周りにも使うよう促せば、部下も使いやすくなるでしょう。
チャットなどの返信反応はスピード感を大切に
ビジネスチャットは「短く」「テンポ良く」「スピーディーに」が基本です。オフラインに比べて、直接確認できないためスピード感のあるやりとりが求められます。
ただし、相手には即返信を求めないことが大切です。また相手に相談したいことがある場合は、相談があることだけを送って返信を待つのではなく、相談内容(用件)まで詳しく記載しておくと、相手も対応がしやすくなります。
クッション言葉
感情が伝えにくいテキストコミュニケーションでは相手への配慮・思いやりが必要不可欠です。例えば「質問いいですか?」「お疲れ様です」「大変恐縮ですが」といったクッション言葉があると、やわらかい印象が与えられます。
しかし多すぎると、かえって相手にスクロールの手間をかけてしまったり、無駄に考えさせてしまうことになるため、使いすぎには注意が必要です。
オンライン通話ツールを積極的に利用する
ボイスコミュニケーションは、チャットよりもスピーディな対応ができるため、緊急時や急ぎの質問があるときは、通話ツールの使用がおすすめです。
また前述したように、雑談などちょっとしたコミュニケーションがとりやすいのもボイスコミュニケーションのメリットと言えます。通話ツールを積極的に活用し、気軽にオンラインコミュニケーションができる仕組みが整えば、コミュニケーション不足の解消に大いに役立つでしょう。
オンラインコミュニケーションの成功事例
続いて、オンラインコミュニケーションの成功事例を紹介します。ぜひ導入の参考にお役立てください。
千代田化工建設株式会社|SNSで社員の声を集め、経営につなげていく
建設会社の千代田化工建設は、会社が目指すビジョンと社員の意識とのズレに課題意識を持ち、社内SNSのあり方を刷新。社員の素直な言葉を集め、社内SNS上で共有する「discover!プロジェクト」をスタートさせました。
会社や業務に対する思いを共有したり、育児と仕事の両立に向けた意見を募集するなどと、海外拠点を含めた『社員の思いを集める場所』として、社内コミュニケーションのプラットフォームを提供しています。
パナソニック株式会社|One Panasonic
電機メーカーのパナソニックは「何かを変えたい」という志の高い社員が集う、社内有志の会を発足。2000人を超える規模の社内ネットワークで、定期的に情報や知見の共有を行っています。経営陣との意見交換といったタテのコミュニケーションはもちろん、部門やカンパニーを越えるヨコのコミュニケーションの促進にも効果があり、相互理解や社内の活性化に役立てています。
株式会社エル・ティー・エス|オンライン社内勉強会の開催
コンサルティング会社のエル・ティー・エスは、開始と終了の時間を1時間に固定した、「オンライン勉強会」を隔週で実施しています。勉強会の終了後の質問会や交流会で、部署や世代に関わらず活発な意見交換を行うことで社員の交流が進み、コロナ禍においてもイベントが積極的に行われる社内体制が構築されました。
円滑なオンラインコミュニケーションを実現するツール3選
最後に、オンラインでのコミュニケーションを快適にするのに役立つツールを3つ紹介します。それぞれの特徴を確認した上で、自社にあったツールを選ぶことが大切です。
①Slack(スラック)
世界中100ヶ国以上で使われており、日本国内でも毎日50万人以上が利用している人気のビジネスチャットツールです。チャット機能をはじめ、ビデオ通話、ファイル管理、リマインド設定、検索機能など、ビジネスに必要な機能が集約されています。
またチームやプロジェクトごとにやりとりができるチャンネル機能も便利です。途中から参加した人でも過去の情報が閲覧できるので、スムーズに情報共有ができるでしょう。検索機能に優れているため、ナレッジツールとしての活用も可能です。
【特徴】
・どんな種類のファイルでも気軽に共有可能
・1,500以上の外部サービスと連携可能
・無料ビデオ通話と音声通話。話しながら画面共有も可能
【料金プラン】
• 無料 ※機能制限あり
• 月額850円/1名あたり(プロ)
• 月額1,600円/1名あたり(ビジネスプラス)
②Chatwork(チャットワーク)
ChatWorkは、国産のビジネスチャットツールです。30万社以上の企業で導入されており、チャットはもちろん、ビデオ通話やタスク・ファイルの管理も可能です。シンプルな機能で、システムに苦手意識があるという人でも使いやすいツールと言えます。
【特徴】
・国産チャットツール
・タスク管理やファイルの共有も可能
・一度送信したメッセージを削除したり、編集できる
・シンプルな操作性で使いやすい
【料金プラン】
• 無料 ※機能制限あり
• 月額500円/1名あたり(ビジネス)
• 月額800円/1名あたり(エンタープライズ)
③Microsoft Teams(チームズ)
Microsoft社が運営する「Office 365」のチームコラボレーションサービスです。チャットや通話機能の他、ビデオ会議やファイル共有、会議の録音、Officeアプリとの連携機能が搭載されています。
Office 365ユーザーであれば無料で利用が可能です。またOffice 365を利用していない場合でも、無料版で使用感を確認できます。
【特徴】
・最大1万人の大規模ライブイベントが可能
・高度なセキュリティ対策を実施している
・「Word」「Excel」などオフィス製品と親和性が高い
・30以上の言語翻訳機能があり、通訳を挟まずに他言語の相手とやりとりできる
【料金プラン】
• 無料 ※機能制限あり
• 月額540円/1名あたり(Business Basic)
• 月額 1,360円/1名あたり(Business Standard)
まとめ
今後も仕事のオンライン化はますます進んでいくでしょう。テレワーク下ではお互いの顔が見えにくいからこそ、シーンに応じた適切なコミュニケーション方法をとることや、ルールづくりが大切です。
また自社にあったツールを活用しながら、快適にオンラインコミュニケーションができる環境を整えていきましょう。