セルフケア

ポジティブ感情とネガティブ感情②ポジティブ感情の効能と高め方

導入

ウェルビーイングを構成する5つの要素の1つであるポジティブ感情。ポジティブであることは仕事や生活において大切だということは感覚的にはわかるけど、具体的な効果や高め方はわからないという人がほとんどだと思います。またポジティブが大切だからといって、無理にポジティブを装うことは、ポジティブ感情を高めることとは全く異なります。

今回はポジティブ感情に焦点をあて、ポジティブ心理学の観点からその特徴や効能、高め方を紹介します。

ポジティブ感情の特徴と効能

ポジティブ感情の種類

ポジティブ感情の定義や種類はさまざま紹介されています。フレドリクソン教授によると、ポジティブ感情は喜び、感謝、やすらぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬、愛の10種類に分類・整理されています。

ポジティブ感情の特徴とは?

先に紹介したようなポジティブな気持ちになった時、「この時間がずっと続けばいいのにな」と願うような気持になったことはありませんか。

残念ながら、ポジティブ感情は長続きしないという特徴があり、ほとんどの人はそのことを経験的に知っています。しかし、ポジティブ感情もネガティブ感情も、いっしょにいる人に伝染します。楽しい人のそばにいれば楽しい気分が人に伝わり、広がっていくという特徴も持っています。

ポジティブな感情を人に伝えたり、受け取ったりすることで、ポジティブな気持ちを味わうチャンスを増やしていくことができると言えるでしょう。

ポジティブ感情の効能とは?

従来の心理学では、何らかの理由で傷ついた心身の治療に重点が置かれていたため、ネガティブ感情を対象とした研究が中心でした。近年、ポジティブ感情の研究が進むと、ネガティブ感情がある特定の行動に結びついているのに対し、ポジティブ感情には異なる効能があることが注目されるようになりました。

①思考や行動の範囲を広げ、創造性を高める

 思考や行動のバリエーションが広がり、アイデアが湧くようになる

②回復力を高める

 ネガティブな出来事にもポジティブな意味を認め、立ち直る力を高めることができる

③知的・心理的・社会的・身体的スキルやリソースの形成を促す

 将来役立つポジティブなスキルやリソースを獲得に動け、さらにそれがポジティブな感情や経験の増加につながっていく

④ネガティブな感情やストレスへの対応力が高まる

 不安などのネガティブな感情、ストレスなどへの対処ができるようになる

こうしてみると、ポジティブ感情の持つ効能は、つながりや可能性を広げることで好循環を生み、その積み重ねで持続的な幸福やウェルビーイングにつながっていくことがわかります。

ポジティブ感情を高める方法とコツ

ここからは一人でも取り組め、仲間を増やすとさらに効果が上がるポジティブ感情を高める方法とコツを紹介します。いずれの方法においても「無理やりポジティブにふるまう」のは逆効果。焦らず、どんな場面や行動のときに自分の内側からポジティブな気持ちが湧き上がるのか、観察しながら進めましょう。

その日に体験したよかったことを書き出す

自分ですぐに取り組める方法で、一日の終わりにその日起きたよかったことを3つ、そう感じた理由とともに書き出します。

大勢でいっしょにやってみるとわかるのですが、3つをさっと書ける人もいれば、うーんと唸って手が止まってしまう人もいます。

そんな時は、範囲を1日から一週間、それでもだめなら1か月や1年に広げて考えてみてもよいでしょう。

どうしても思い浮かばない時は、家族や知人に同じ質問をしてみましょう。「卵焼きがきれいに巻けた。お弁当に入れたら子どもが喜んでくれた」、「仕事でわからない操作を、隣のAさんが教えてくれた。“この間仕事で助けてもらったからお互いさま”と言われて、ますますうれしくなった」などなど。人のうれしかったことを聞くと、自分のうれしかったことが見つけやすくなります。

定期的な習慣にすることで、うれしかった気持ちを追体験でき、起きたことへの感謝の気持ちも高まります。

感謝の気持ちを表現する

日頃から身近な人への感謝の気持ちを味わい、伝えることは、とても大切なことです。改めてその気持ちと向き合うことで、自分が一人ではなく支えられ、活かされていることを実感できるようになります。

加えて、もしまだ感謝の気持ちを伝えられていない人がいる場合は手紙を書いて訪問し、あらためて感謝の気持ちを表現するのもおすすめの方法です。

ポジティブな感情を家族や知人と共有する

ポジティブな気持ちになったら、その体験は一人の心の中で反芻するだけではなく、身近な人に話してみましょう。

「うれしい」という感情一つをとっても、自分で何かを達成したうれしさ、人が話を聞いてくれたうれしさ、伝わったといううれしさ、人の役に立てたうれしさなどたくさんの種類があります。

個人的なうれしい体験を共有することで、「つながるうれしさ」も体験でき、ポジティブ感情が倍増するでしょう。

人や物事のポジティブな側面に目を向ける

「自分のよいところを3つ挙げてください」と言われても見つけられない、むしろ悪いところばかりが浮かんでくるという人は、リフレーミングの手法を使ってみましょう。

例えば「せっかち」とネガティブな印象の言葉があれば、それを「決断力がある」というようにポジティブな印象の言葉に言い換えていくことをリフレーミングといいます。

ウォーキングする予定だったけれど悪天候でできなくなった場合は、「できなかった」というネガティブな一面ばかり見ていてはポジティブな感情は生まれません。「ウォーキングはできないけれど、おかげで掃除をする時間ができた」というように気持ちや行動を切り替えていくと、ポジティブ感情の比率が高まります。

心地よいと思うことを個人的なことから他者との関係、社会との関係に広げていく

ポジティブな感情を味わえる行為や行動は人それぞれ。個人的なことであれば趣味に思い切り没頭する、自分をいたわってリラックスさせるなど、いろいろな方法が思い浮かぶでしょう。

ポジティブ心理学では、自分だけではなく、他者への親切や社会への貢献と幸福度の高さの関係についても、研究が進んでいます。ポジティブ感情を高める行動のバリエーションとして、身近な人に親切にする、自分にできる社会貢献を考えてみるのもおすすめです。

席を譲る、荷物を持ってあげる、署名に協力するなど、無理なくできることでかまいません。やってみると、個人で感じるポジティブ感情とはまた違う、新たな側面を発見できるでしょう。

まとめ

感情にはさまざまな種類があり、それぞれ役割や効能を持っています。ポジティブ感情は一時的で長続きはしませんが、思考や行動のレパートリーを広げたり、役立つリソース形成に効果があります(拡張―形成理論)。

ネガティブ感情をねじ伏せたりせず受け止めながら、ポジティブ感情を積み重ねていくことで、ウェルビーイングな状態に一歩ずつ進んでいきましょう。