一日、そして人生の大半の時間を費やす仕事において満足度や幸福度を高めることは、ウェルビーイングな状態を目指す人にとってとても重要なこと。しかし、さまざまな要因でやる気をそがれたり、仕事に対するモチベーションを維持することが難しいと感じる人も多いでしょう。
今回は仕事の幸福度を見直すためのウェルビーイングやポジティブ心理学のポイントを解説します。また自分の内側からモチベーションを高めていく方法も紹介します。
仕事の幸福度を高めるには内発的動機付けが重要
ポジティブ心理学の第一人者セリグマンによると、仕事での幸福度を高めるには、次の3点が重要です。
・好きなことをやっているか
・仕事を通して自分の考えや発想を表現しているか
・主導権をもって仕事に取り組めているか
この3点が満たされている状態は内発的動機付けされている状態であり、フロー、つまり仕事に没頭しやすくなります。内発的動機付けとは、自分の内側から湧き上がる 興味や関心意欲による動機のことです。従来は賞与や昇給、他人からの評価や叱咤激励などの外発的動機付けが重視されていました。しかしウェルビーイングを高めるためには自分の内側から湧き上がる動機(内発的動機)を意識して、引き出していくことが大切です。
仕事の満足・不満足につながる要因
不満足の解消だけでは幸福度につながらない 〈衛生要因〉
モチベーションに関するハーズバーグの理論によると、仕事に満足をもたらす要因「動機付け要因」と、不満をもたらす要因「衛生要因」は異なっています。
衛生要因とは会社の方針や管理方法、労働環境や作業条件(金銭、時間、身分)などが挙げられます。人は仕事選びの段階でもこの要因を重視し、満たされないと不満が生じます。
衛生要因に折り合いをつけることで不満は解消されます。しかし、それは従業員の不満足や離職等の予防にはなりますが、仕事の満足感や高いモチベーションにつながるとは限らないと言います。
仕事の幸福度を高める〈動機付け要因〉
仕事の幸福度やモチベーションを高めるためには、衛生要因の不満足を解消しつつ、動機付け要因に働きかける必要があります。動機付け要因とは次のようなものです。
・達成感
・評価を受ける
・責任
・昇進
・成長の機会
これらが満たされるとやる気やモチベーションのアップにつながりますが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。
従業員満足度を高めるには、成長の機会となる責任ある仕事を任せたり、適切に評価をフィードバックしていくことが大切です。
高いモチベーションを保つ条件
たとえば責任ある仕事を任せたり、評価を上げてたくさん感謝されても、賃金は据え置きでその重責に見合う報酬を受けられていないと感じればやる気がそがれ、その仕事に対するモチベーションを高く維持することは難しくなります。
衛生要因を改善しつつ、動機付け要因に働きかけ、両方をバランスよく満たしていくことが、モチベーションを高く保つことにつながります。
仕事のモチベーションを高めるためのコツ
ビジョンとミッションを意識する
仕事のモチベーションが高い人に共通することとして、ビジョン意識、ミッション意識の高さが挙げられます。ビジョンとは、たとえば「平和で自然にあふれた環境」といったような、目指す社会のイメージ像のこと。ミッションとは使命感のことで、自分以外の誰かや高い目的への貢献意識のことです。
具体例としては「子どもや子育てママを応援するための商品提供」がミッションであれば、ビジョンはそれを通して「子どもの笑い声がひびく社会」を実現すること、などです。視点を大きく持つことで、仕事の価値や意義を感じながら働くことができるので、モチベーションも上がります。
ビジョンをしっかり固めておくと、悩んだり脱線したときも、本来やるべきことや方向性を確認するための道しるべとなります。
目標を明解に設定する
日々の仕事やプロジェクトなどは、何のためにやっているのかを見失ってしまうとモチベーションも下がります。目標を明確にすることで、何をすべきかも見えやすくなるので、やる気や意欲も高めやすくなります。
目標は難しすぎずやさしすぎず、できる限り具体的に立てるのがコツ。また、目標を達成したときの自分の様子をイメージすると、モチベーションをキープしやすくなります。
スモールステップで達成感をたくさん味わう・祝う
モチベーションを維持するためには、目標を達成した感動を味わうことが大切です。しかし仕事やプロジェクトが長期化すると、目標がぶれたり、仕事内容がマンネリ化して、達成感を味わいにくくなります。
長期的なスパンで取り組む仕事なら、短期的な目標や課題を立てて、1つひとつクリアしていくことが大事です。スモールステップで進めることで、小さな達成感をなんども味わい、実感することができます。
目標を達成して成果をあげたときにはしっかりお祝いすることで、リフレッシュ効果やモチベーションアップも狙えます。
停滞しない―とにかく動いてみる
悩んで立ち止まることは誰にでもあります。また、やるべきことがあっても腰をあげるまでに時間がかかる人もいるでしょう。
そんな時は時間を停滞させず、とにかく動いたり作業したりするのがおすすめです。たった5分でも時間を区切って手を動かすと、短時間でも達成感や一歩前進を感じられます。
自分のモチベーションをマネジメントする
まずは、自分のモチベーションがどんな時、どんな要因で上がるかをふりかえってみましょう。没頭を意味するフローな状態に入りやすい時間帯や体調など条件はあるでしょうか。
自分が成果を挙げていきたい大切な仕事や勉強は、集中力が持続し、没頭しやすい時間に設定するのがおすすめ。一日のうちで気分が乗らない時間帯、人の出入りが多く集中しづらい時間帯には溜まりがちな単純作業をするなど、メリハリをつけることも大事です。
誰でも、モチベーションややる気の波があります。波の傾向を掴むことができれば、モチベーションや幸福度を高めるセルフマネジメントも可能です。
まとめ
いかがでしたか。仕事に費やす時間は人生の中でも大きな割合を占めるので、その時間の質や幸福度を上げていくことは、人生の質を上げていくためにも大事なことです。幸福度につながるモチベーションは、外側の要因を改善するだけでは高められません。外側からの要因改善に加え、自分の内側に働きかけることも重要です。ポジティブ心理学の理論やモチベーションアップのポイントが参考になれば幸いです。