セルフケア

私からはじめるウェルビーイング 幸福度の5つの要素と実践のヒント

近年、職場をはじめ、ビジネスシーンでもよく聞かれるようになったウェルビーイング。「ウェルビーイング経営」といったように、企業努力として導入され、認知や組織的な取り組みが進められていますが、その本質は「1人ひとりの幸福追求」にあります。これまでになく多様性が重視されている現代社会の中で、働き方や求める幸福も1人ひとり異なります。1人ひとりの背景や強みを生かしていけるウェルビーイングの考え方や実践の参考になる枠組みについて紹介します。

ウェルビーイングの概念と背景‐ポジティブ心理学

従来の心理学とポジティブ心理学‐1人ひとりの幸福度を高める

心理学の知見には、人がよりよく生きるためのヒントがたくさんあります。しかし、従来の心理学では、なんらかの理由で傷ついた心を治療し、本来あるべき状態にまで回復することに重点が置かれていました。そのため、職場で傷つき、離職した後にセラピーやカウンセリングで初めてその考え方やトレーニングに出会うことがほとんどでした。

それに対して、ポジティブ心理学は、全ての人を対象としています。人のプラス面に焦点を当て、本来持つ力をより発揮することによって、1人ひとりの幸福度を高めることに重点が置かれています。従来の心理学にも、傷ついた人の回復はもちろん、全ての人が輝くための知見やトレーニングがたくさんあり、それらも現代社会の中で見直され、離職者の防止や従業員1人ひとりのウェルビーイングを高めるために企業にも導入されています。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイングを直訳すると「健康」や「良好な状態」を指します。ウェルビーイングを考える際によく引き合いに出されるWHOの健康の定義は、現代社会の状況やポジティブ心理学の知見に基づき、次のように定義されています。

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)

また、ウェルビーイングのingが示すように、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を目指すことも指します。

仕事や人生の幸福度について考えるフレームワークを持つ

幸福の5つの要素PERMA

セリグマン教授は、幸福は測定可能なものとして、以下の5つの要素を提唱しています。自分にとってのウェルビーイングを考えていく枠組みとして、自分の現状と照らし合わせてみてください。

‐ P(Positive Emotions) ポジティブ感情

 さまざまな感情のうち、明るさや快感、愛、ぬくもり、希望、自信、感謝などのことです。これらの感情を日常的に感じる量が多い人は、困難な状況にあっても立ち直りが早いということが多くの実験でも検証されています。

‐ E(Engagement) エンゲージメント

物事に積極的に関わりを持ち、何かに没頭したり夢中になれる状態のことを指します。没入状態とかフロー状態とも呼ばれます。

‐ R(Relationships) 関係性

 他者と豊かな人間関係を築くこと、協力してくれる人を見つけることは、幸福度を高める上でとても重要です。

‐ M(Meaning) 意味・意義

 自分よりも大きな存在を信じ、人生に意味や意義を求めることです。使命感を持ち、目的意識を持って行動することを指します。

‐ A(Accomplishments) 達成

 何かを成し遂げることです。

PERMAを支える重要なポイントと実践のヒント

自分なりのウェルビーイングを考えて実践していくうえで、押さえておくべきポイントを解説します。

自分の強みを持つ・意識する

全ての人に共通の視点として5要素を紹介しましたが、重要なことは、その5つの要素を具体化していけるのは、「私」であるということです。1人ひとりの個性が違うように、幸福の在り方も十人十色です。セリグマン教授は、1人ひとりの持つ強みがPERMAを支えると言います。昨今では企業主導でウェルビーイングを導入し、従業員の幸福度アップやケアを積極的に行われていますが、それを支えているのも働く人1人ひとりの積極的なコミットや強みです。

持続的であること

ウェルビーイングを考えるうえで最も重要なポイントは、持続する幸せの追求です。ストレス解消のためにリフレッシュの旅行に出かけても、数日の間は幸せな気分でいられたとしても、ずっと続くことはありません。一時的な幸せやリフレッシュはもちろん大事ですが、それも含めて5つの要素による幸福度が持続していく仕事の在り方を考えることが重要です。

ネガティブ感情‐否定ではなく、受けとめる

ウェルビーイングにおけるポジティブ感情とは、常にポジティブであれという意味ではありません。どんな人にも怒りや悲しみといったネガティブな感情はつきものです。目を背けるのではなく、その感情や原因を前向きに受け止めることが大事なのです。そのうえで、ポジティブ感情の比率を高くしていくことが重要です。

幸福度を自発的にコントロールする意志

たとえば、好きな仕事につけていないから、幸福度を高めにくいと考える人もいるでしょう。確かに好きな仕事や得意な仕事なら使命感を持ち、没頭して成果を上げ、ポジティブな感情を増やしやすいでしょう。

しかし、多くの人は得意・不得意に関わらず、仕事の幸福度を高められています。重要なことは、幸福度は自分でコントロールして高められるという信念です。仕事の意義や誰にどんな形で貢献できるかを見直したり、目標を定めて没頭できる環境を作ったり、できることはたくさんあります。

まとめ

働き方改革や企業努力として浸透しつつあるウェルビーイング。その根底には、1人ひとりの仕事や人生の幸福度を高めるポジティブ心理学の考え方があります。今回は、ウェルビーイングな常態を目指す人のために、幸福度の5つの要素と実践のヒントを紹介しました。自分の現状をふりかえり、今後の見通しを立てていくための参考になれば幸いです

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