現代社会では、どんな職場や職種でも、多くの人が強いプレッシャーを感じながら仕事に取り組んでいます。プレッシャーが強いとミスをしやすい、大事な商談やプレゼンの本番で力を出せないといったことが起こりやすく、中には離職につながるケースもあります。多くの人を悩ますプレッシャーですが、その本質を理解することで、有害な作用を最小限に抑え、プレッシャーが高い環境でも成果を出すことは可能です。この記事では、プレッシャーをマネジメントするためのポイントと対策について紹介します。
ピンチに強い人などいない?プレッシャーに関する神話や罠
プレッシャーとは、自分がうまく事を運ばなければ自分や他の人が窮地に立たされるかもしれない、成功できないかもしれないといった感覚のことを指します。プレッシャー克服を考える前に、まずは多くの人が持つプレッシャーに関する思い込みや神話、プレッシャーの罠について知っておきましょう。
「ピンチに強い人」という神話
プレッシャーのかかる場面でも成果を出せる人は、プレッシャーなど感じない「ピンチに強い人」であるかのように見えます。しかし、現実にはプレッシャーのない人生なんてありえません。メンタルトレーニングの研究では、「ピンチに強い人」というのは単なる神話であると言われます。ピンチに強い人と言われる人たちはプレッシャーを理解し、プレッシャーをマネジメントするスキルが高い人たちのことだと考えましょう。
期待や応援の罠
親や上司が子どもや部下の成長を願って、期待や応援という名のプレッシャーを「適度に」かけることもあるでしょう。しかしその願いもむなしく、期待や応援が受け手にとって「強い」プレッシャーになってしまうことがほとんどです。その理由は、期待や応援が受け手の「認められたいという欲求」や「見捨てられることへの恐怖」を掻き立ててしまうことにあります。「ミスをしたら上司にどう思われるだろうか」、「期待を裏切ると親が落胆するだろう」と考えてしまうことが、プレッシャーを強めてしまうのです。
うっかり自分にプレッシャーをかけているケース
多くの人は「プレッシャーは外からやってくる」と考えます。確かに上司や取引先、先輩や同僚、親の言葉や態度が引き金となることが多いです。加えて意識的、または無意識的に、次のような言葉でうっかり自分にプレッシャーをかけていることもあります。
・こんなチャンスは二度とない
・ここで失敗したら後がない
・ミスをしたら評価を落とされる
上司やコーチの言葉を自分に向けてリピートしている場合もありますが、自らこれらの言葉を反芻している場合は要注意。また、自分を追い込むときに使う言葉は、ほとんどが思い込みや思い癖である点にも注意を払う必要があります。
プレッシャーのマネジメントに必要なポイント
あらかじめ、自分がプレッシャーを感じる場面やその時の思考・動作を分析しておけば、実際の場面でプレッシャーの有害な作用を最小限に抑えることができます。
プレッシャーはどんな仕事にもつきものだと受け止める
プレッシャーに弱い人は、プレッシャー自体をなかったことのように扱ったり、自分ばかりプレッシャーを感じて不平等だと思ったりします。中にはプレッシャーのかかる仕事や職場は自分には向かないと、離職を選ぶ人もいます。しかし、どんな職場や職種にも、プレッシャーがかかる局面は必ずあります。まずはプレッシャーは誰にでも、どんな仕事にもつきものであることを受け止めることから始めましょう。
プレッシャーのかかる状況とその時に感じる気持ちを把握する
自分はどんな時に大きなプレッシャーを感じているでしょうか。新しい仕事を任されたとき、人前でプレゼンテーションをするとき、それとも上司に期限付きで大事な会議の書類づくりを頼まれたときでしょうか。職場で直面するハイプレッシャーな状況をリストにし、次のことも書き込んでみます。
・なぜ不安を感じるのか
・プレッシャーを受けてミスをしたときにどんな結果になるか
・誰に対して責任を感じるか
冷静な状態で分析してみると、ハイプレッシャー状況では「こんなチャンスは二度とない」と思い込んでしまうことも、仕事をしていれば何度も巡ってくることに気づきやすくなります。
緊張を味方につける
ハイプレッシャーな状況では、強い緊張で頭が真っ白になってしまう人もいます。そんな時、緊張していないかのようにふるまったり、闘ったりすると、かえってパフォーマンスの低下を招きます。反対に緊張感が全くないのも困りもの。自分が力を発揮しやすい適度な緊張状態を見つけましょう。緊張反応は、心臓の音が早くなる、手の指をいじる、表情が硬くなる、汗をかく、膝が震えるなど、人によって異なります。自分のパターンをつかみ、適度な緊張状態を保つためにできる行動をリスト化しておきましょう。
プレッシャーを克服できた場面を分析する
これまでの人生をふりかえり、プレッシャーに振り回されず、成果を出せた場面を書き出してみましょう。ポイントは、その時の周りの状況、自分の体の状態、感覚(聴覚・嗅覚などで感じたこと)、感情まで詳細に思い出すことです。例えば大事なプレゼンの場面で、心臓は多少バクバクしていたけれど心地よく、嫌な汗をかくこともなく、一人ひとりの顔がよく見えたというように、詳しく書き留めます。プレッシャーの強くかかる場面で、その時の状況を追体験できるよう、繰り返しイメージトレーニングしておくのがおすすめです。
プレッシャーが強い場面でできること
前項の自己分析やポイントをふまえ、これから直面するプレッシャーがかかる場面に備えましょう。
自分がコントロールできることに集中する
周りの期待に応えよう、失敗して落胆させたくないという思いがプレッシャーになる場合は、期待や応援をかけてくれる人にどう思われるかではなく、自分の任務に集中することが大事です。期待や応援にすべて応えることはできません。前向きに受け止めたうえで、自分がコントロールできることに意識を向けましょう。
前向きで楽観的な姿勢を保つ
プレッシャーがかかる場面では、最悪の場面を想定して、さらに緊張を強めてしまいがちです。ハイプレッシャーな状況ではとくに前向きで楽観的な姿勢を保つことが重要です。しかし、ネガティブな思考癖がある人が、本番だけポジティブになるのは難しいでしょう。いざというときのために、日頃から前向きな言葉や行動を意識的に選びましょう。
完璧である必要はない、「いつもの通り」がベスト
ハイプレッシャーな状況では、自分がどう見られているかが普段より気になるため、完璧であることに執着したり、実力以上のことをしようとして失敗したりする事例もよくあります。プレッシャーのかかる本番では、いつも通りに自分のベストを尽くすことに集中しましょう。そのためには自分の実力でできることを把握、プレッシャーのかかる状況を想定して練習することも大事です。
まとめ:プレッシャーを理解して、セルフマネジメントに活かそう!
いかがでしたか。これだけ多くの人がプレッシャーに悩んでいても、行き当たりばったりの対策が多く見られます。大事なことは、プレッシャーについて理解すること。そして、自分がプレッシャーを感じた時の思考や言動のパターンをつかみ、対策を考えることです。プレッシャーとうまく付き合っていくための参考にしてください。